岩波文庫<br> アリストテレス弁論術

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岩波文庫
アリストテレス弁論術

  • 著者名:戸塚七郎
  • 価格 ¥1,386(本体¥1,260)
  • 岩波書店(2018/11発売)
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  • ISBN:9784003360484

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内容説明

古代民主制国家の下で発展したギリシア弁論術の精華.著者は弁論術を,あらゆる場合にその問題に見合った説得手段を見つけ出す能力――と定義,師プラトンが経験による〈慣れ〉にすぎないとした従来の弁論術も,その成功の原因を観察し,方法化することによって〈技術〉として成立させ得ると主張する.明解で読みやすい新訳.

目次

目  次
   凡  例

 第 一 巻

 第一章 序 論──従来の弁論術と技術としての弁論術
   弁論術と弁証術/弁論術研究の可能性/従来の弁論術の不備/係争当事者のなすべきこと/立法者と裁判官の仕事/議会弁論は術策の余地がない/説得推論と論理的推論/弁論術の有用性/弁論術の仕事
 第二章 弁論術の定義
   弁論術の定義と領域/二通りの説得/弁論術の説得の三種/弁証術・倫理学との関係/弁証術の証明との類比/例証と説得推論の違い/説得の意味と特徴/弁論術が扱う対象/弁論術の推論の前提/説得推論の前提/ありそうなことと徴証/例証/説得推論の二種/弁証術と弁論術の論点
 第三章 弁論術の種類
   弁論術の三種類/弁論が関わる三つの時/弁論の目的/弁論の三つの前提
 第四章 議会弁論
   審議の対象/この探究の限界点/審議の五つの主題
 第五章 幸  福
   幸福がすべての目的/幸福の定義/幸福の部分/血筋のよさ/よい子供に恵まれること/富/名声/名誉/身体の徳/よい老年/友人/好運/徳
 第六章 よいもの
   よいものの定義/追加規定と実例/よいことの明白なもの/異論のあるものの評価
 第七章 より大なる善・利益
   より大・より小の定義/より大きな善/種類間の大小/継起関係における大小/第三のものとの比較/二つのものの比較
 第八章 国  制
   国制分類の必要/国制の四種類/各国制の定義/各国制の目的
 第九章 演説的弁論
   演説的弁論の目標/美しいものの定義/徳/徳の諸部分(徳目)/徳の徴と成果/美しい(立派な)もの/類語による称讃/聴衆が称讃する行為であること/相応しい行為であること/選択による行為であること/称讃と讃辞/称讃と助言の相互変換/増大誇張/各種弁論に適した方法
 第一〇章 法廷弁論
   不正の考察の三視点/不正の定義/不正を選ぶ動機/不正行為の外的動機/行為の内的動機/付帯的な原因/1 運による行為/2 自然による行為/3 強制による行為/4 習慣による行為/5 考量による行為/6 憤りによる行為/7 欲望による行為
 第一一章 快  楽
   快楽の定義/本性との一致は快い/習慣は快い/強制されぬものは快い/欲望が向うものは快い/欲望の二種/記憶や期待に基づく快楽/他の快楽
 第一二章 不正をなす者と蒙る者
   不正が可能な場合/罰を受けないと信ずる場合/発覚しないと信ずる場合/罰は小さいと信ずる場合/不正を加える相手/不正行為の種類
 第一三章 不正行為の分類
   正・不正の分類/二種類の法による規定/二種類の人による規定/不正は意図的行為/不正には意志が働く/書かれていない正・不正/1 自然の正・不正/2 公正/公正が適用される行為/いかなる行為が公正か
 第一四章 より大きな不正行為
   品性の不正に基づく場合/被害の大きさによる場合/その他の基準による場合 (一)/弁論の効果的方法/その他の基準による場合 (二)/書かれていない法に反する行為
 第一五章 弁論術に本来属さぬ説得
   この種の説得の数/Ⅰ 法/書かれた法を攻撃する場合/書かれた法を弁護する場合/Ⅱ 証人/昔の証人/最近の証人/証言/Ⅲ 契約/契約が有利な時/契約が不利な時/Ⅳ 拷問による自白/Ⅴ 宣誓/宣誓を求めない場合/宣誓を拒む場合/宣誓要求を容れる場合/宣誓を求める場合/宣誓が相反する場合
 第 二 巻

 第一章 聴き手の心への働きかけ
   前巻の要約/弁論の狙い/聴き手の感情/論者が信頼される根拠──人柄/感情
 第二章 怒  り
   怒りの定義/個人に向けられ、快を伴う/軽蔑の諸相/怒る時の心の状態/怒りの相手/結び
 第三章 穏  和
   穏和の定義/穏やかに接する相手/穏やかな人の心の状態/結び
 第四章 友愛と憎しみ
   友愛の定義/友愛の相手/友愛の種類/友愛の条件/憎しみの定義/怒りと憎しみの違い/結び
 第五章 恐れと大胆さ
   恐れの定義/恐ろしいもの/恐れられる人/恐ろしいもの(続)/いかなる状態の時恐れるか/大胆さの定義/大胆さの対象/いかなる状態の時大胆か
 第六章 恥と無恥
   恥ずべきことの定義/恥ずかしく思う相手/恥を感ずる場合
 第七章 親切と不親切
   親切の定義と説明/弁論の進め方/親切のカテゴリー/不親切
 第八章 憐 れ み
   憐れみの定義/どんな状態の時憐れみを抱くか/憐れみを誘うもの/憐れみを誘う人
 第九章 義  憤
   義憤と憐れみ/義憤と妬み/義憤を覚える対象/義憤を覚える時の状態/結び
 第一〇章 妬  み
   妬みの定義/妬みを抱く時の状態/妬みの対象となるもの/妬みの対象となる人/結び
 第一一章 競 争 心
   定義・競争心を持つ時の状態/競争心を持つ対象/競争心を燃やす相手/感情全体の結び
 第一二章 年齢による性格(一)──青年
   考察のテーマ/青年
 第一三章 年齢による性格(二)──老年
   青年との比較
 第一四章 年齢による性格(三)──壮年
   壮年は中間的性格/壮年の時期
 第一五章 運による性格(一)──家柄のよさ
   家柄のよさによる性格/血統の正しさとの違い
 第一六章 運による性格(二)──富
   金持の性格/成金と古くからの金持/金持の不正
 第一七章 運による性格(三)──権力と好運
   権力/好運
 第一八章 共通の論点
   これまでの要約/三種の弁論に共通な論点
 第一九章 共通の論点──各論
   可能と不可能/過去と未来/大と小
 第二〇章 共通の説得手段──例証
   二つの共通な説得手段/例証の二種/歴史的事実による例証/創られた例証──比喩/創られた例証──寓話/寓話と歴史的事実の比較/例証を用いる場合
 第二一章 共通の説得手段──格言
   格言の定義/格言の分類/補足をする場合/格言を用いる場合/定着している格言に反対の場合/格言の効用/結び
 第二二章 共通の説得手段──説得推論
   定義の確認/問題特有の論点を知る必要/説得推論の要素(論点)/結びと次の考察
 第二三章 説得推論の論点
   有効な説得推論
 第二四章 見せかけの説得推論

 第二五章 説得推論の反駁
   反駁の二方法/四種類の異論/四種類の反駁
 第二六章 説得推論の注意事項
   誇張と過小評価は論点でない/反駁のための説得推論/異論は説得推論でない/一・二巻のまとめ
 第 三 巻

 第一章 第三巻の主題
   弁論の三つの部分/表現方法の考察/演技的要素──声/演技に関する術は未組織/表現方法の歴史
 第二章 表現の優秀性
   1 明瞭さ/2 適切さ/3 聞きなれない表現/詩的表現の注意/新造語と日常語/同音異義語と同義語/比喩/比喩の適切さ/比喩の不適切さ/修飾語/縮小詞
 第三章 生彩のない表現
   1 合成語/2 聞きなれぬ語/3 修飾語/4 比喩
 第四章 譬  え
   譬えの定義/譬えの使用/譬えの実例
 第五章 表現のよさ
   正しいギリシア語/1 接続語の適切な使用/2 固有の名を用いる/3 多義語を避ける/4 名の性別/5 数の違い/句読点/接続語は共通であること/要点を先に示すこと
 第六章 表現の重厚さ
   名の代りに説明句を用いる/複数形を用いる/分離表現/接合表現/表現の拡大
 第七章 表現の適切さ
   適切さの定義/釣合い/感情を表わす/人柄を表わす/注意事項
 第八章 リ ズ ム
   散文にリズムは必要/散文のリズム/パイアン調の使い分け
 第九章 文体表現の構成
   二つの表現構成/連結されただけの表現/周期的な文/周期的な文の二種/節の並置と対置/パリソーシス、パロモイオーシス
 第一〇章 洗練された表現
   理解できるもの/比喩の効用/譬え/対置された表現/比例関係による比喩
 第一一章 生々とした表現と味のある言葉
   生々とした表現の定義と実例/比喩は洞察を要する/別な予想を与える/警句/巧みな謎/予期せぬ語と作り変えた語/味のある言葉/適切な同音異義語/譬え/諺/誇張表現
 第一二章 表現方法の種類
   弁論に応じた表現方法/書かれた弁論と討論用弁論/繰り返し/接続詞省略/討論用の表現/演説用の表現/表現分類の限界
 第一三章 言論の部分
   不可欠な二部分/従来の分類──批判
 第一四章 序  論
   定義/笛の序曲に似ている/称讃・非難による序論/忠告による/法廷弁論からの援用/法廷弁論の序論/序論の目的/告発・弁明における序論/聴き手における治療効果/長い前置きの効用/演説的弁論の序論/議会弁論の序論
 第一五章 中  傷
   中傷を解消する論点/中傷する側の論点/両者に共通な論点
 第一六章 陳  述
   演説的弁論の陳述/行為についての陳述/法廷弁論の陳述──告発の場合/法廷弁論の陳述──弁明の場合/陳述は簡潔であるべき/陳述に性格を表わす/感情的要素/陳述の注意事項/陳述の場所/議会弁論の陳述
 第一七章 説得(証拠立て)
   法廷弁論における説得/演説的弁論における説得/議会弁論における説得/実例/説得推論/感情/道徳的性格/各種弁論の比較/反対者に対する説得/自分を表わさない/説得推論の変形
 第一八章 質問・答え、冗談
   質問する時機/いかに答えるか/冗談
 第一九章 結びについて
   結びの構成
   解  説
   参考文献
   訳 者 註

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

lily

148
国語の教科書にプレゼン力、知性で相手を圧倒させたい時、もうこの一冊で不足無し。目次だけ眺めてもそこらのビジネス書の100冊分は盛り込まれていることが一目瞭然。こそっとこの本をコピペした本で溢れかえっていること推測容易だし、これだけの密度でこの弁論術を越える本を探すのは難しいだろう。5W1H×感情分だけ解決法が存在するので。後は、アウトプットして練習を積むのみ。読書感想文は最適。2019/07/22

のっち♬

123
政界から保身まで需要の高まった弁論術。著者はプラトンの様な非難はせず、必然性に基づく弁証法と対比させて蓋然性をいかに説得性へ変換できるか技術としての体系化を試みた。言論を基盤としつつ聴き手に与える心理的効果も重視。文体、リズム、声色、比喩、演技、誇張、偏見の上塗り(効果的な中傷法)、段取りなど実例に裏付けされた実用書。未洗練な文章や矛盾が気にならないでもないが、如何なる分野も学問家する著者の気概が十分伝わる。言論を真理探究だけでなく表現・コミュニケーションのツールとしても分析できるキャパは画期性があった。2023/05/05

イプシロン

27
本著を読むなら、「本来の(弁論術の)仕事が説得をなしとげることにあるのではなく、それぞれの問題にふさわしい説得の方法を見つけ出すこと(技術=テクネー)だ」という弁論術の“目的”を熟知して全編を読む姿勢が肝となろう。つまり、弁論術とは聞き手を説得することを目的としているのではなく、最良の説得方法を模索し、実際に言論によって(結果の如何に関わらず)実践することにあると理解して読むべきなのだ。したがって、弁論術をもって(説得に成功する)結果を出す方法という手段のための手段を求めるなら、本著を読む意味はない。2023/12/17

アミアンの和約

14
哲学書というより技術書といった本。役立つ部分もあるが、アリストテレスが念頭に置いていたのはポリスの中での議論の仕方なので、そのままでは使えないだろう。2024/02/12

Z

14
説得の技術。アリストテレスは議論の組み立てかなりしっかりしてて、結構すき。実はこの本はそんなに面白くなかったが、論を聞 かせる相手の類型、若者、壮年、年寄りの心理的な傾向の分析、説得するのに用いたほうが有利な感情の分析といい、説得というのは論理だけでなくこういった視点も含めなくてはいけないのかと学べた。この本よりも、論理学の著作の文庫化してほしいなぁ、。2018/01/28

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