内容説明
美しい容姿と豊満な肉体、そして人より永い寿命を持つ〈寄生種〉のスイ。彼女は寒村の船頭と慎ましくも幸せな生活を送っていたが、東方と名乗る美青年の扇動で村人たちに疎まれ、人柱として生き埋めにされる。生き延びるために死肉を喰らったスイはやがて……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
112
先見があり、悪いものが見えるというスイは生き神様として崇められていた。艷美なる彼女は不老不死であり、生肉を食らう。特に赤子の肉を好む。宿主である彼女に関わる男、女たちも彼女の魔力にとりつかれ、彼女とともに堕ちていく。妖しく淫ぴな世界に引き込まれ一気読み。ところで、東方さんはどうなった…?2019/03/07
あも
96
とろりと粘る甘い肉。噛み砕かれた比喩としての柘榴の赤。人魚の肉を食べ、老いず、ヒトの本質を見抜く"生き神様"。人外の力の代償は童女のような無邪気な幼さか。彼女は、求められるまま託宣を垂れ、自身に魅せられた者の庇護を受け生きるしかできない。なんて愛しく、なんて哀しい。老いや死は怖いが、生き物の理から外れてしまう事のなんたる残酷さ。善悪の軛から離れた彼女を愛したヒトは闇に飲まれずにいられない。妖しくも美しい完成された世界観。この世から一歩あちらへ足を踏み入れる。それはなんと喜ばしきこと。篠たまき、本物である。2019/05/23
タイ子
90
伝説で聞く八百比丘尼、人魚の肉を食べて不老不死になった男。本作に登場するスイという女性。川原で薬種問屋の長男に助けられ囲われる身に。観音様のような容貌、長い黒髪、白い肢体はまるで人魚のよう。そこからスイを取り巻く、いやスイの魅力にどっぷり浸かり、彼女と共にあり得ない人生を送ることになった男女の何代かに渡る物語。作中の女性たちはみなかつて男たちに虐待され、哀しみと怒りで生きてきた。そこで出会う観音様のようなスイの存在に魅かれる。ただ、食する肉がアレなのが許せない。深紅の紫陽花を見つけたら要注意。無いけど…。2021/07/18
うどん
83
グロかった!不思議な雰囲気でした。2018/12/04
オフィーリア
65
これはめちゃくちゃ良かった…!退廃的でおぞましい描写の連続なのにグイグイ惹き込まれ、美しいとすら感じてしまうのが本当に恐ろしい。純粋で人理から外れた存在に魅入られ、ゆっくりと狂っていく様を描く文章が何よりも魅力的。文章の素晴らしさに存分に浸れた読書でした。2024/09/26