内容説明
近隣への散歩、ソ連での散歩……。歩を進めるうち、現在と過去がひびきあい、新たな記憶がよみがえる……。死を前にした清澄なひびきをもつ晩年の秀作。野間文芸賞受賞作。巻末に口述筆記の様子がうかがえる「丈夫な女房はありがたい」を収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
79
脳血栓を患った著者晩年の「散歩」という名のついた8篇に、「丈夫な女房はありがたい」の巻末エッセイと野間文芸賞選評の特別付録を収載。全篇にわたって登場するのが、彼女、女房、女、女性の三人称で書かれている武田百合子さん。特に、あごに白いひげを生やした男が目玉の大きいのんきそうな女と散歩する「鬼姫の散歩」が抜群に面白い。白土三平の「サスケ」に出てくる眼玉の大きな少女「鬼姫」そっくりだと言い、ユーモラスに描かれている。「船の散歩」「安全な散歩?」の2篇は、武田百合子の『犬が星見た』の外伝として読むことができる。2021/04/06
chanvesa
30
『司馬遷』のような緊密な初期の作品に比べて、晩年のこの作品はどこか諦念のような、あるいはのんびりしたような雰囲気が漂い、独特な趣きがある。「たとえば『あたしも今に死ぬのね。イヤだなあ。いつ死ぬのかしら』と、死にそうもない顔つきで女房に問いかけられるさいは、笑ったような笑わないような表情で『ウフフ』と答えるのが、目下のところ一番無難である。(43頁)」微笑ましいような、寂しいような。「船の散歩」「安全な散歩?」は、口述筆記の際に、議論の上で細部に彼女の意見が反映されたところも少しはあったとしたら面白い。2021/09/21
ぱせり
11
大病後の作品とは思えないほどの伸びやかな「散歩」は、一種の達観なのかもしれない。人生が散歩、と思うなら、わたしの今このときも散歩の途上。ときに道に迷ったり、思いがけないところで躓いたりしても仕方がない。休み休み、思うままの歩調で、歩くことを楽しめたらいいな、と思う。2023/10/26
moyin
10
再読するとき、今まで気づかなかった点、つまり百合子の日記が一部の文章の下敷きになっていることが目に入った。泰淳は『犬が星を見た』を読んだらどう思うか。2021/05/14
ふるこ
6
冷静で簡潔な中に愛情を感じる文章。これを武田百合子が口述筆記していたのかと思うと感慨深い。昔の景色や気持ちを良く覚えてるもんだなぁ。家族のためにこの本を残したかったのかな。富士にいても東京にいてもロシアにいても変わらない人だな。2019/11/18
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