内容説明
彼には、仲間がいた。誰からも愛され可愛がられた。イングランドを護る。それが彼の望みだった。だが、父王は、ノルマンディー公国から嫁いだエマに骨抜きにされ、国政は言うがまま。デンマークからはクヌート軍に攻め込まれ、いまやイングランドは風前の灯だった。だが彼はあきらめなかった。運命に反旗を翻すのだ。誰をも幸福にした王子の戦いの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆり
16
馴染みのない時代のお話でしたが読みやすく一気に読了。勇猛な兄と常に自分を比較しつつも、謙虚で心優しく臣下に慕われ戦の世を生き抜いたエドマンドの姿がひどく印象的でした。エディスのじゃじゃ馬っぷりというか周りの強い男性陣に守られるだけに決して甘んじず自分自身で戦う姿も凛と格好良かった。エドマンドの恋心がなかなか報われずに切なかったし結末も切なかったけれど、確かな幸せもあったようで、読後に余韻が残りました。エンマのお話もこれから読みます。2019/02/02
みみずく
16
『虚飾の王妃エンマ』と対になった物語。イングランドにとって重要な要であった兄を失ったエドマンド。どうしても堂々としたリーダーシップを持っていた兄と自分を比較してしまうが、彼を支える人たちが口々に「あなたはどうぞそのままで」と言ってくれる人徳…そして悩みながらもいつまでも優しい心を捨てなかった。敵であるクヌートともお互いに一目置く関係になるのも彼らしい。ヒロイン・エディスの凛々しい活躍も光っていてエドマンドがして欲しいということといつも反対のことをする、というのが最高だった。両方読んで良かった。2018/11/20
湖都
15
『エンマ』と対になっている本。こちらの主人公は、エンマが嫁いだイングランド王の先妻の息子・エドマンド。歴史上ではエドマンド二世で、エンマの義理の息子だが歳はそう離れておらず同時代人。『エンマ』読了後なので大体の話の流れは承知済みだが、こちらは表の物語であると感じた。青年がイングランドを守るために懸命に戦って散る物語。エンマの長く鬱屈するような受け身の物語とはやはり正反対。エドマンドが死んでもエンマは駒として生き続ける。意外なのは、ヒロインのエディスとの恋があまり盛り上がらなかったかなぁ。2019/09/22
ときわ
11
エンマを先に、続けてこっちを読んだ。エンマに比べエドマンドにはあまり魅力を感じなかった。なぜわざわざ対にして2冊の本にしたのか理由が分からなかった。視点を変えるなりして一続きの話の方が読みやすかったのではないかしら。作者は実際の歴史をもとに書いているらしいので、それとは大きく違う運命を登場人物に与えていない。惜しいわ。歴史はヒントくらいにして、昔々あるところにこんな国があって・・・、と自由に話を広げて書いてくれないかな。その方が面白くなると思うんだけど。2021/04/28
ハッピーハートの樹
9
人と人を繋ぐこと。それもリーダーシップ。真正面からぶつかる強さは兄アゼルスタンには及ばないけれど、苦境に立たされたときの再起する力·支援が集る魅力はエドモンドほうが上なんだろう。2人が健在だったなら、デンマークにも負けなかったかもしれないね。エマの本性はチラリとしか見えませんでした。もう1冊のほうで明らかになるのかな。読まずにはいられないですね。/血。子供のうちには、そんなものは何物にも影響しないと思っていたけど、親になって変わりました。上手く言えないけど、血を引いていることは特別なこと。不思議な気持ち。2019/01/24