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内容説明
南方熊楠・柳田国男・折口信夫・金田一京助・新村出……出版人が垣間見た、学者・文人の知られざる裏の顔。
繊細で几帳面な南方熊楠、「じれる」柳田国男、舌鋒の峻烈な内田魯庵、無愛想な浜田青陵……。自らを「裏木戸の出入り人」と呼んだ本屋(出版業)しか知りえなかった、貴重な近代日本の出版事情がわかる回想記録。大正から昭和のはじめにかけた民俗学・文化人類学・人文地理学・言語学の黎明期、いまも読み継がれている不朽の名作を誕生させた伝説の編集者が垣間見た、学者・文人たちの知られざるもうひとつの顔。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
71
大正から昭和初期にかけて名立たる文人達の書物を世に出した編集者の作者たちとの交流。それに纏わる出版悲喜こもごも。本当にとんでもないビッグネーム達ばかりに読みながら慄くばかり。それでも大御所が出版を任せたのは、売上ばかりを重視しない岡氏の人柄のお陰だろう。しかし、出版に至るまでは結構、ハード。金田一氏の境遇と困った性格、博文社と岩波書店との『辞苑』存続を巡る争い、戦争、柳田氏の本をもう一度、出版するまでに冷や汗。一方で浜田氏に別れが告げられなかった事と「もっと、自分が売り込めば・・・」という後悔も苦い。2019/06/11
kawa
37
戦前、出版業を営み民族学・考古学の発展の裏方として多大な貢献をした岡茂雄氏の回顧録。直前に柳田國男氏の「故郷七十年」を読み、南方熊楠氏も含め興趣ありでチャレンジ。なかなか手ごわくて拾い読みが、いつの間にか全読。高名な学者先生の無茶ぶりに、いかに対応するかが興味の焦点。分野も異なるが、学者・研究者の同様な振舞いに翻弄された経験ありの我が身としては、人ごとと思えない記述に引き込まれる。吉野文六氏に続いて、我が郷土の尊敬できる先達に巡り合えてラッキー。浅間温泉や上高地の記述、今も身近な存在でリアル感たっぷり。2021/10/27
スプリント
9
大御所達に振り回される出版社の悲哀と本に対する愛情を強く感じました。2019/03/21
石橋
1
随分前に読んでいたが、「内田魯庵山脈」下巻の途中で、寄り道再読。当時の出版社の心意気たるや。それはそれとして、私が読む本に出てくる柳田先生はいつも感じ悪い。それぞれの著者は大抵「如何に影響を受けたかお世話になったか」を付け足しているけれど、「感じ悪柳」の読後感に満ちるの面白い。2020/10/03