内容説明
迷子でいいのだ。
前の人が曲がったら、曲がる。
バスが来たら乗ってみる。
そうして道に、仕事に、人生に、はたまた納豆を買うか否かにまで迷ってきた著者による、旅、仕事、学生時代……などにまつわる書き下ろし迷エッセイ集。
プラハで北がわからない「タコと地図」、勝手に食事を決められる「おばあさんのバイキング」、18歳の夏に高田さんが見せた「変圧器」、ミニスカポリスに手錠をかけられる「革命の夜」など、20作品を収録。巻き込まれて迷い込む、抜けられないエッセイの楽しみ!
立川談笑さん推薦!
「正直で不器用。まるで落語の熊さん。」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
71
帯にあるとおり、迷子でいいのだ・・と、思う部分がある。誰しも、そんな場面があると思う。それでも、何とかなることが多いのは、何故だろう。この文章の力の抜け具合が絶妙。迷うことを楽しむくらいのこころでいたい。2022/06/26
アキ
69
若い頃の焦燥感。背もたれを倒さない人との関係性を避ける気持ち。流されるまま何も決められなかったけど、やりたくないことをわざと選ぶ天邪鬼な性格。自分が行ったことに自信が持てず、ネガティブな若い頃の自分が甦る。「人は変わるものだと僕は思っている。ずっと変わらない一つだけの自分なんて退屈過ぎるじゃないか」「なりたかった自分になれないまま生きていく。それが生きていくということではないのだろうか。だからこそ人生は面白いのだと、あの日から数十年経た今、僕はそんなふうに思うのだ。」年月を経て至る境地はみな同じなんだなあ2019/08/02
阿部義彦
30
左右社です、目の付け所がシャープですね。これはかなり売れるんじゃ無いでしょうか?脱力エッセイとでも言うのかなあ。穂村弘さんとは目指す方向は似ているようですが根本は全然違いますね。作者の事は初めて知りましたが、これはもう勘で左右社の新刊案内で目にしてから買うべきだとピンと来ました。そして正解でした。装幀も素敵と思ったらクラフト・エヴィング商会でした。椎名誠さんの本のコピーをそのまま引用すれば、これこそ平成最後のオモシロカナシズム!売れそうですねー。頑張れ左右社!2018/09/18
たまご
24
サツバツとした広告業界の中で,この「ユルさ」に包まれた柔らかさは,大変だったんじゃないかなーと思いつつ,お葬式のおじい様の話をよんで「この血が流れてれば大丈夫か!」とも感じました. 面白さの中に,こちらの心の柔らかい部分に触れてくる内容が心地よい本でした. 作者名,「あっ,そーかも!」というのでペンネーム付けたのかな?と思ってるんですけど,本名なのかな…?2020/03/17
波多野七月
24
言葉にならなかった思いは、いったいどこへ行くんだろう。誰かに話すでもなく、ネットに書き込むのでもなければ、ノートに書きとめるわけでもない。その人がこの世からいなくなるか、記憶がなくなれば消えてしまうんだろうか。それがずっと、不思議で仕方なかった。この本を手にしたとき、かつて私の中にもあった「言葉にならなかった思い」と再会したように感じた。ベージュやグレーの装丁や、手になじむ柔らかな紙質の素材がどこか曇天の空を思わせる。迷子でいいのだ、と帯のフレーズを呟いてみる。呼吸をするのが、ほんの少しだけ楽になった。2018/10/08