内容説明
現代数学は数学者だけの高度なものと考えがち! だが、じつは考え方そのものは日常の生活のなかでよく経験している。著者はそういって、集合・関数・構造・群・位相などの概念の本質を、古代からの数学の歴史をたどりつつ、卓抜な比喩で解き明かす。本書前半「数学は変貌する」では、読者はその名調子に身をまかせ安心して聞きほれることができる。堅苦しい数学観も一変するにちがいない。学校数学になじんだ理系学生にも、その闊達な筆致のデッサンは魅力だろう。後半「現代数学への招待」はその詳論。解説はらせんを描きながらより高みへと読者を誘う。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
オザマチ
17
再読。数学の歴史と現代数学における概念の数々を、様々な比喩や図を道具としながら解説している。分かりやすく説明するって、やっぱり大変なことだ。2020/06/21
しんすけ
14
懐かしさを感じさせる本だ。今回が初読なのに。。。 教養部の数学で群・環・体なる定義を教えられ、高校までに習った微分方程式以上の惑溺するする世界があることを知った。もっとも最初は軍艦隊と勘違いしていたが。 そのころ初めて雑誌『数学セミナー』を読みだした。1965年前後だ。本書も『数学セミナー』連載を基にして作成された本なのだが、連載は1963年らしい。ぼくは読んでいないことになるが、それでも懐かしさを感じた。種明かしすれば、本書と似た話を遠山啓自身が各所で語り著しているから、その記憶が鮮明なのかもしれない。2019/07/09
太田青磁
13
前半は、数学史を踏まえ数学の立ち位置を語りかけてくれます。古代エジプトや中国の源泉からタレスの功績を。中世はピタゴラスやユークリッドの公理系から、静的な世界感を構築します。近代はデカルトの座標、ニュートンの微分積分、ライプニッツの関数論、パスカルの確率統計と動的な解析が進みます。そして現代数学のテーマは数学の構造に迫り、ぐっと抽象度が高まります。後半は現代数学をテーマ別に掘り下げます。集合論、群、環などの定義すら追いつけませんが、ところどころにでてくる具体例に少し救われます。距離の議論は興味深いです。2012/10/27
オザマチ
11
群・体などの代数系や位相などの“構造を扱う数学”の方が理解しやすいと説き、いくつかの例について定理や証明をきちんと出しながら紹介している。実数や複素数などの計算法・応用例・いくつかの定理を知らないと抽象代数学を楽しむことなどできるはずは無いと思っていたから、著者の考えと説明の仕方には驚かされた。2013/10/01
まつど@理工
6
現代数学を誰かに教えようと思うと意外に難しい。それは本当の意味で理解していないのだと気づかされる。その点、遠山先生が書かれたこの本は切り口が分かりやすく、僕にとって学ぶことの多い一冊であった。2013/08/03