ちくま学芸文庫<br> 餓死した英霊たち

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ちくま学芸文庫
餓死した英霊たち

  • 著者名:藤原彰【著】
  • 価格 ¥1,045(本体¥950)
  • 筑摩書房(2018/10発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480098757

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内容説明

アジア太平洋戦争において死没した日本兵の大半は、いわゆる「名誉の戦死」ではなく、餓死や栄養失調に起因する病死であった──。戦死者よりも戦病死者のほうが多いこと、しかもそれが戦場全体にわたって発生していたことが日本軍の特質だと著者は指摘する。インパール作戦、ガダルカナル島の戦い、ポートモレスビー攻略戦、大陸打通作戦……、戦地に赴いた日本兵の多くは、無計画・無謀きわまりない作戦や兵站的な視点の根本的欠落によって食糧難にあえぎ、次々と斃れていった。緻密な考証に基づき、「英霊」たちのあまりにも悲惨な最期を明らかにするとともに、彼らを死へと追いやった責任を鋭く問う、告発の書。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ベイス

106
加藤陽子さんが必読書にあげていた。アジア太平洋戦争の日本軍戦没者230万の過半数は、戦闘で死んだいわゆる「名誉の死」ではなく、餓えと病気による「餓死」である、との告発。第一章でガダルカナルやインパールなど個別の戦場の実態が、第二章でなぜこんな無惨な事態が繰り返し引き起こされたのかの検証がなされる。著者本人が従軍していたこともあり、その筆はマグマのような憤りが沸沸と横たわりつつ、理路整然としていて鋭い。類似の『失敗の本質』より、こちら方が腹に落ちた。中でも「幼年学校」による偏狭な教育の弊害を指摘したは白眉。2023/05/19

かおりんご

30
歴史。何が一番ショックだったかというと、先の大戦で亡くなられた方の大半が戦病死だったこと。華々しく戦ってなくなられた方も勿論おられたけれど、火力装備軽視、兵站軽視の白兵主義で、ただ精神力だけで戦った方たち。戦病死には、マラリアや赤痢、栄養失調で命をおとした方が含まれます。日清日露の歴史から学ぶことなく、机上の空論、理想だけで作戦を実行していったのでしょう。さらに、戦病死に拍車をかけたのが『生きて虜囚の辱しめを受けるな』という軍規。人の命を軽視しすぎです。読んでいて、とてつもなく切なくなりました。2018/08/17

nnpusnsn1945

24
中国戦線だと、食事に困らないかと一見考えてしまうが、大陸打通作戦で食料不足や疫病が深刻であったことが伺える。著者が作戦に参加したからこその貴重な体験である。安定した補給がないことも、占領地域の住民の反感を買ったのであろう。食料不足だと将兵の性格が荒れるのは当然のことである。仙台の護国神社にガダルカナル島で亡くなった将校の日記があったが、自己を奮い立たせる言葉に混ざって食事情の厳しさも書かれていた。もし靖国神社の遊就館に行くことがあれば、勇ましい展示の裏側に、本書のような事例があったことを思い返してほしい。2020/09/24

Ex libris 毒餃子

15
このときの失敗を徹底的に追及しなかったこと、総括も粛清もしなかったことがのちの日本社会における組織的宿痾につながっていると考えられはしないだろうか。補給線の軽視、精神主義への偏り、エリート主義による現場軽視はいまも続いてはいないか。今の若者は餓死せず、メンタルを病み、死しても英霊になれないのだ!戦前から続くレジームからの脱却は必要なのである。2022/09/15

ののまる

15
そういうことか❗️ そもそも一般人にも兵士に対しても人権が確立していないところに徴兵によって集められた兵隊、日清戦争・日露戦争勝利の奢りも加わり、派閥で固められた年少からのエリート養成軍機関による机上の作戦重視による補給線軽視、火力武器への軽視、多民族への蔑視…。これって形を変えて現在に通じている。ほとんどの兵隊が闘ってではなく、餓死や病死で命を落とした責任について真っ向から向き合わず、戦後ずっと無視してきたからこそ、今の政治家や日本社会でも、先進国でありながら、人権意識が根底からないのでは。2021/04/26

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