岩波文庫<br> 紋切型辞典

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岩波文庫
紋切型辞典

  • 著者名:フローベール/小倉孝誠
  • 価格 ¥858(本体¥780)
  • 岩波書店(2018/10発売)
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  • ISBN:9784003750131

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内容説明

ここに編まれたおよそ1000の項目は,衣服,飲食物や動植物に関するもの,礼儀作法の規範,身体と病気についての俗説,芸術家,歴史的人物の逸話と彼らの評価など,多岐にわたる.フローベール(1821-80)はその記述に様々な手法を駆使して,当時流布していた偏見や言葉の惰性,硬直した紋切型の表現を揶揄し,諷刺してみせた.

目次

目  次
   凡  例

 紋切型辞典

 あ
   アイスクリーム/アイスクリーム屋/隘路/赤毛の女性/アカデミー・フランセーズ/アキレス/あくび/悪夢/顎ひげ/四阿/厚かましさ/暑さ/あばたのある/アブサロム/アブサン/アベラール/アメリカ/過ち/蟻/アルキビアデス/アルキメデス/アルコール中毒/アルビオン/アロエ/泡/あんず/アンドロクレス/安楽椅子/アンリ三世、アンリ四世
 い
   胃/イヴト/イエズス会員/医学/医学生/筏/怒り/異教徒/イギリス式庭園/イギリス人/イギリス人女性/医者/伊勢エビ/イタリア/イタリア人/異端審問/一服(の嗅ぎ煙草)/いとこ/糸杉/田舎/田舎貴族/犬/いやはや/イリアス/イルカ/入れ歯/韻/インク壺/陰茎強直症/いんげん豆/印刷された/印刷術/陰部/隠喩/韻律辞典
 う
   ヴァチカンによる破門/ヴェネツィアの総督/ウェレス/うおのめ/ヴォルテール/うさぎの白ワイン煮込み/疑い/歌姫/腕/馬/海/運動
 え
   栄光/嬰児殺し/衛生/駅/駅馬車/えくぼ/柄つき眼鏡/悦楽/エトルリアの/エパクト、黄金数/エピクロス/宴会/円積問題/煙突掃除夫/燕尾服
 お
   オアシス/王政/オオヤマネコ/弩/贈り物/オーケストラ/お忍び/白粉/オスマン・トルコの宰相/オッフェンバック/オデオン座/お年玉/オペラ座(の楽屋)/おまわり/オメガ/おもちゃ/オリーヴ油/オルレアン公フィリップ=エガリテ/愚か者/音楽/音楽家/温順な雌馬/雄鶏/女/女家庭教師
 か
   蚊/絵画/外交官職/外国(人)/外国語への翻訳/会場/懐中時計/外套/怪物/解剖/快楽/怪力男/会話/蛙/顔/鏡/書かれた/牡蠣/書く/格言/学者/学殖/革新/学生/家具調度品/学問/楽屋/かさぶた/飾り棚/火事/歌手/家政/化石/仮説/潟/ガーター/固い/学校/褐色の髪の女性/カトリシズム/カトリック同盟員/金/株式相場/株式仲買人/髪/神/神殺し/仮面/鴨/芥子/体/ガルド=コート/ガルフ=ストリーム/革/かわうそ/革の鞭/考える/宦官/簡潔/感謝/慣習に従って/関税/歓待/感動
 き
   記憶力/幾何学者/気球/器具/木靴/喜劇/雉/技師/寄宿学校/鬼神/奇人/キス(する)/貴族/貴族階級/絹のハンカチ/きのこ/基盤/騎兵隊/義務/逆説/ギャロップ/急進主義/義勇兵/キュジャス/キュラソー/卿/教育/教師/競争/共同寝室/恐怖/共謀者/共和主義者/去勢していない雄牛/キリスト教/キリスト十字架像/キリン/きれいな/金銀細工師/金庫/銀行家/近所の人々/筋肉/金髪の女性/禁欲主義
 く
   偶像崇拝者/空論家/鎖を解く/くしゃみ/くしゃみする/口絵/口すすぎコップ/口ひげ/苦痛/屈辱/靴磨き/靴屋/熊/クラブ/クラリネット/栗/グループ/クレオール/黒い/グロッグ/グロリア/群衆/勲章/軍隊
 け
   軽騎兵/敬具/経済学/警察/形而上学/芸術/芸術家/競馬騎手/痙攣/外科医/毛皮/下剤/下宿/月桂樹/激昂/結社/決闘/ゲーム、賭博/ゲリラ/剣/検閲/衒学趣味/言語/健康/現行犯/献身/幻想/建築/建築家/憲兵/憲兵隊/倹約/原理/堅牢な、断固たる
 こ
   小石/航海家/豪華贈答本/睾丸炎/高級家具師/工業/工業・商業/興行主/皇后/広告/工場/公証人/好事家/公正証書作成人/交接・性交/耕地/幸福な/合法性/公務員/公明正大/小型帆船/こがねむし/ゴグ/国事詔書/黒人女性/黒人、黒人の話す下手なフランス語/国立音楽学校/語源/コサック兵/ゴシック様式/湖上(集落)/個性/古銭学/古代/古代の骨董品/こだま/誇張/誇張法/国家/国旗/滑稽/ゴッダム/骨董品/ゴッド・セイブ・ザ・キング/古典作家/子供/コニャック/近衛隊/コパイババルサム/コーヒー/小人/小舟/ゴブラン織/ごまかす/小間使い/ゴム/コーラン/コルセット/ゴルディアスの結び目/コレラ/根拠/コンサート/昏睡状態/コントラルト/コンパス/建立
 さ
   才気/財産(運)/詐欺師/策略/叉銃/作家/サッフォー詩体とアドニス詩体/砂糖菓子屋/サトゥルヌスの祭り/砂糖を入れる/サトラップ/砂漠/サーベル/寒さ/ざりがに/サロン評/山賊/サント=ブーヴ/散文/散歩/三文記者
 し
   詩/字/ジェノバ(の町)/塩入れ/時間/子宮/死刑執行/死刑執行人/死刑台/事故/耳垢/仕事/司祭/自殺/痔疾/四旬節/詩人/自然/自然発生/時代/時代/下着/市町村長/七宝工芸/漆喰/湿気/実験室/叱責する/実践/嫉妬/湿布/辞典/至福/司法官職/ジムナーズ座/霜焼け/社会/瀉血する/奢侈/写真/しゃちこばった/ジャッカル/しゃっくり/シャトーブリアン/シャルトル会修道士/ジャルナック(の一撃)/ジャンセニスム/シャンペン/銃/自由/醜悪、恐怖/習慣/住居/宗教/銃撃戦/銃殺/十三/十字軍/羞恥心/修道会員/十人会/自由貿易/祝辞/宿命/呪詛/出産/趣味/狩猟/狩猟家/殉教者/娼家/浄化/商業/将軍/象形文字/冗語/城塞/小集落/小説/肖像画/証人/乗馬/娼婦/譲歩/証明書/消滅/情欲/書簡体文学/除去する/職/食事/植物/植民地(フランスの)/職務交替する/食欲/書庫/処女/書信/女性の衣裳/女中/ジョッキークラブ/書物/初夜権/女優/所有権/所有者、家主/書類/書類入れ/ジョン・ブル/シラミの群れ/ジロンド派/神経性の/神経の病気/新語法/紳士/寝室/シンバル/新聞/新聞小説/進歩/侵略/親類
 す
   水害被災者/水銀/水車/衰弱/彗星/数学/スカーフ/梳き櫛/スキュデリー/スクリュー/雀/スチュアート(メアリー)/スパイ/スパルタの奴隷
 せ
   正義/請求書/聖ジュヌヴィエーヴ修道会所属の参事会員/青春/聖書/聖職/正書法/精神錯乱/聖体拝領/青鞜/青銅/生得的な(観念)/青年/聖バルテルミーの虐殺/正理論派/雪花石膏/摂政時代/折衷主義/摂理/背中/セネカ/セビリア/せむし/宣教師/洗浄/戦争/戦端/セント=ヘレナ
 そ
   象/象眼/葬儀/象牙のような白さ/総裁政府時代/想像力/挿入/叢林/損害賠償/ソンブルーユ
 た
   体液/大学/大気/代議士/大根役者/胎児/体質/太守/大臣/大聖堂/体操/タイツ/対比/大麻/ダイヤモンド/大洋/大理石/代理人/ダーウィン/ダゲレオタイプ/戦い/駝鳥/種馬/種馬飼育場/煙草/ダービー/卵/騙されやすいひと/ダマスカス/ため息/タレーラン/男色/ダンス/ダントン/弾薬入れ/暖炉/暖炉職人
 ち
   チェス(ゲーム)/力/地球/チーズ/秩序/地平線/中学・高校/忠実な/腸詰め/腸膜/貯蓄(金庫)/直観/治療
 つ
   追従者/追悼演説/月/綱/角笛/つばめ/妻を寝取られた男/強い
 て
   手/ディアナ/ディアーブル/ディオゲネス/帝政/帝政支持者/抵当権/提督/ディドロ/低劣な/デカルト/できもの/デザート/哲学/デッサン(術)/鉄道/手の込んだ筋書き/手袋/デモステネス/デュピュイトラン/天才/天使/天守閣/天文学
 と
   問い/ドイツ/ドイツ人/籐/胴衣/陶器/洞窟/道化師/洞穴/統合(王朝の)/陶酔/動物/動物磁気/東洋学者/研ぎ屋/独身男たちの昼食/独身者/独占/独房/徒刑囚/閉じた/都市の役人/ドナウ川/富/ドミノゲーム/鳥/取り巻き/トリュフ/トルコ帽/トルバドゥール/ドルメン
 な
   ナイフ/長靴/亡き/投げ槍/夏/名付け親/なつめの実のゼリー/ナポリ/南仏(料理)/南仏人
 に
   臭い(足の)/肉屋/にしん/偽金作り/日曜日/日本/入市関税/にんにく
 ね
   ネクタル/猫/熱/熱狂/眠り/眠る(眠りすぎる)
 の
   農家/農業/野兎/農場主/農民/ノヂシャ/乗合馬車/ノルマンディー人
 は
   歯/売却/廃墟/歯医者/陪審団/排泄物/梅毒/パイプ/パイプオルガン/敗北/蠅/パガニーニ/バカロレア/吐く息/拍車/白鳥/博覧会/禿げ/化け物/馬車/場末/バスク人/八十歳のひと/発汗/発明家/鳩/バニョレ/ハープ/葉巻/ハム/早起きの/腹/パラディオン/パリ/パルミラ/ハーレム/ハーレムの女/パン/半円形階段教室/ハンガリー歩兵/反キリスト/犯罪者/汎神論者/判読不能な/ハンモック/反乱
 ひ
   火/日/ピアノ/緋色、緋色染料/光/蟇蛙/鼻孔/美術館、博物館/ヒステリー/砒素/脾臓/脾臓を除去した者/額/左利き/羊飼い/ヒッポリュトス/ひと/人殺し/批評家/碑文、申込み/誹謗文書/ヒポクラテス/ヒマラヤスギ/肥満/秘密資金/百科全書/比喩/ビュフォン/描写/病人/ピラミッド/ビリヤード/ビール/ビロード
 ふ
   ファエトン/ファンファーレ/フィガロ/ふいご/風景画/風光明媚の地/フェンシング/フォーク/フォルナリーナ/フーガ/吹き出物/福音書/フクシア/服従した/不死鳥/侮辱/婦人/不信心者/豚/舞台背景/豚肉屋/普通選挙/仏教/不道徳/ぶどうの葉/太ったひと/太り肉/船酔い/船/冬/プラドン/フラミンゴ/フランス学士院/フランス革命期の亡命貴族/フランス嫌い/フランス軍の猛攻/フランス人/フリカッセ/フリーメーソン団/ブルターニュ人/フレスコ画/ブローチ/分/文学/文法/文法学者
 へ
   碧玉/ぺてん師/ベートーヴェン/蛇/ヘブライ語/ペリカン/ペルー/ベルギー人/ヘルニア/ヘロデ大王/弁護士/編纂/変身/便秘
 ほ
   母音衝突/棒/萌芽/放火魔/砲撃/封建制/奉仕/帽子/放縦/砲弾/放蕩/冒涜/法服/方法/法律/ほうれん草/矛槍/星/干しすもも/保守主義者/ホスポダール/没頭/ホテル/帆幅/ポピリウス/ボヘミヤン/ホメロス/ポーランド糾髪病/ポール=ロワイヤル/ポンサール/ポンチ
 ま
   埋葬/舞姫/マエストロ/マカダム式舗装法/マカロニ/マキアヴェリ/マキアヴェリスム/巻き毛にする、巻き毛/幕間/枕/マザラン批判文書/魔術/貧しい人々/マスターベーション/町娘/マッキントッシュ/マットレス/まむし/マムルーク/摩滅した/真夜中/丸いふくらみ/丸い砲弾/マルサス/マルセイユ人/丸屋根/万華鏡/マンドリン
 み
   水/湖/水治療法/密告者/密猟者/ミルク
 む
   無気力/無限小の/婿/無実/無邪気さ/無神論者/娘/夢想/無能さ/夢遊病者/村の鐘楼/ムール貝
 め
   明暗法/明白/名誉/メキシコ/召使い/雌/メダル/メフィストフェレスのような/メロドラマ/メロン/免状
 も
   猛獣使い/もぐら/モザイク/物乞い/森
 や
   冶金術/椰子/野次馬/夜食/野心/野心家/屋根裏部屋
 ゆ
   唯心論/唯物論/憂鬱症/夕食/遊蕩者/遊歩道/有名人/ユゴー/ユダヤ人/ゆで肉/輸入/指/指輪
 よ
   陽気さ/容貌/予算/夜の集い
 ら
   ライオン/落成式/駱駝/楽天家/ラシーヌ/ラシャ/ラテン語/ラ・ファイエット/ラ・フォンテーヌ/ランセット
 り
   里/力学/理工科学校/利己主義/離婚/理想/リトレ/理髪師/略署名/両性具有者/猟肉/料理/旅行/旅行者/リラの花/輪郭線/りんご酒
 る
   ルイ十六世/ルソー
 れ
   例外/霊感/礼儀作法/冷静/レインコート/レヴェイヨン/レストラン/憐憫
 ろ
   老人/労働者/ロクセラーヌ/ろくろ/ロシア皇帝/ロシア皇帝の勅令/ロマンス/ロンサール
 わ
   猥褻/ワイン/和解/若者/別れ/惑星/ワクチン/ワーグナー/わけの分からない言葉/綿/鰐/笑い/ワルツ/悪ふざけ/腕白小僧
   解  説

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

のっち♬

120
約千単語の辞典形式で列挙される19世紀フランス社会に流布した偏説。匿名他者の言葉だけで構成されていようが選出には我が出る。"人前でこれさえ言えば"礼儀が成立するという、脅迫じみた"べし"の羅列には社会秩序への民衆の硬直した帰属意識と著者の呪詛を感じずにはいられない。"愚か者=自分と同じ考えを持たないひと"という普遍的な多数の本音を通底させ、こうした土壌が思考・言語表現の退行を招く暗示や、喜劇性を引き立てるレトリックも多彩で、ネットで同様に偏向を育む紋切型依存症の文明人でも楽しめるナンセンスさになっている。2023/04/15

Willie the Wildcat

50
人の持つ先入観や偏見を揶揄しながら、時に著者自身の先入観や偏見も垣間見る。勝手に哲学/職業/国・人種で括ってみる。著者の【哲学】が滲むのが「嬰児殺し」と「解剖」。階級社会と死生観。次に【職業】からはどうにも”不信感”が滲む。唯一異彩を放つのが「文学者」。自身の経験が基であれば、切な苦しみ。一方、【人種・国】で目立つのが”全て”や”皆”という十把一絡げ感。不当さ/蝋燭など、辛辣な形容詞が飛び交う中、微笑ましいのがナポリ。際立つイタリア贔屓が時に微笑ましい。紋切型、当時の風刺を現代社会と比較するのも一興也。2019/07/29

harass

44
約40ページある解説を先に読むべきだ。倒錯的なコンセプトに満ちた本だからだ。当時の仏社会で語られていた俗説やありきたりの言い回しを集めた辞典なのだという。著者は友人への手紙にこの作品の意図を語っていて、『人前でこれさえ言えばよい、それだけで礼儀をわきまえた感じのよい人間になれる』と考える人間の話すことを意地悪にもまとめてしまったのだ。実にひねくれた魂胆とアイデアに唸らされる。当たり前だがこういうことを踏まえないで読むと、時間と空間の異なる我々にとって意味不明な項目が多い微妙な作品とみなしてしまうだろう。2015/02/03

lily

18
紋切型辞典 皮肉屋の冷血漢の時代の流行はチラリと見せる低級な一人言葉遊び。頻出度の低いフランス語の練習として割り切るか、フローベールを嘲笑う小道具としての使用法がある。「売却」売ったり買ったり、それが人生の目的だ、とあるので、ブックオフの売却カウンターに持ち込むと一応完結する。2019/06/17

H2A

18
全集に収録されていた時はこんなボリュームがあったろうか、その疑問についても長めの解説で説明される。アルファベットと仮名読みで配列仕方はがらっと変わっているが、それも気にならないほど読むのが楽しかった。「糾弾すべし」を連発したり、辞典と称しながら網羅しようという意図はさらさらなく、悪意ある決めつけと悪ふざけでいっぱいだ。神経質に推敲を繰り返す芸術家肌のフローベールの別な一面にちがいない。読み手もどのみち俗物ならば、居直ってほくそ笑みながら読むべきだろう。教育的効果などどうせないのだから。2014/01/15

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