内容説明
ボクシング雑誌の休刊を機に、念願の文芸部門に異動した那波田空也。久々に鉄槌ジムを訪れると、ジムの花形選手の立花やいじめられっ子の小学4年生・ノンちゃんに出会う。彼らはそれぞれの恐怖を抱きながら、「拳」をふるって戦っていた。
不安になって、傷ついて、怖がって、逃げたくなっても、きみたちはなぜ戦うのか。前作『空の拳』に続き、ボクシングを通して本気で生きるとは何かを問う青春エンタテインメント!
解説・中村航
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カブ
40
前作「空の拳」で全く無縁のボクシングに関わることになる主人公の空也の2年後の物語。すっかりボクシングから離れていたが、あるきっかけで1人のボクサー立花と関わる。その関わり方が煮えきらなくてちょっとイラッとくるけれど、最後はそうだったのかとスッキリした。ボクシングのトレーニングや試合のシーンでは、汗が飛び散る感じ、体力の限界まで戦う感じが伝わる。2020/04/08
やいっち
38
感動の青春巨編。テレビドラマ化を意識したような。リング上の戦いもなかなか迫力があった。相当に取材したのだろう。今問題になっている、いじめ問題も絡められ、語り手は出版社の編集者だが、作者の作家としての体験や知識も鏤められていて、リアル感がある。快作だとは思う。ただ、たぶん、角田さんの本を続けて読むことはないだろう。入院中だったからこそ手にした本。吾輩のようなロートルには青春の光と影はどちらも眩すぎる。2019/06/22
coco夏ko10角
30
『空の拳』続編。今作もよかった。相変わらずボクシングのルールよくわからないけど問題なく楽しめる。『空の拳』それからのみんな、新しい登場人物も。とにかくノンちゃんに空也がいてよかった。立花が戦ったもの、拳の先にあるもの。2019/04/04
ピース
27
得体のしれない恐怖からは逃げるしかない。それは恥ずかしいことではない。何でもかんでも逃げればいいというのではないんだろうけど、必要な時もあるってことかな?立花が最後にボクシングが嫌いにならなくてよかった。2019/11/24
ひろりん
17
普段はボクシングの試合は観ないのですが、カバーの解説に惹かれて買いました。ボクシング雑誌の元編集者の視線で、彼が旧知のボクサーとジムで出会ったいじめられっ子の少年を軸に話は展開します。それぞれは、自らの中に何かを抱え、周囲は色々言うけど、結局は自分にしか分からない、説明できない不安や恐怖の中で、もがき苦しみながら生きてます。どうしようもない不安から逃れるため、自らを追い込んだり、安心できる場所を探したり、方法は人それぞれ。でも、逃げてもいい、逃げて戦うこともできる、そう教えてくれる話でした。2018/10/21