内容説明
月旅行を目指す高校からの四人組。西部戦線帰還兵のクリスマス。変わり者の億万長者とその忠実な秘書。男と別れたばかりの女がつい買ったタイプライター。ボウリングでセレブに上り詰めた男――。「良きアメリカの優しさとユーモアにあふれる短篇集」と各紙で賞賛された、人生のひとコマをオムニバス映画のように紡ぐ17の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
108
トム・ハンクスの小説というので読んでみた。ラブストーリーからSF、シナリオに新聞コラム風と役柄さながらに様々なスタイルの短編集。あたたかさとユーモアがあふれて、あの少し困ったような笑顔が目に浮かぶ。古いタイプライターのコレクターでもあるらしく、どの作品にも小道具として、ある時は重要なモチーフとしてタイプライターが登場し、古き良きアメリカが感じられる。ぜひ小説家としても活躍してほしい。2019/03/18
藤月はな(灯れ松明の火)
107
トム・ハンクス氏が書いた素朴なお洒落さがある短篇集。「へとへとの三週間」は互いに運命の人だと思った人と別れる話。でもこんな意識高い系に合わせ続けて自分のペースを根本的に変えられるのってめんどいわ~!戯曲調でもあり、「幸福で夢が必ず、叶うアメリカ像」を印象づけたアレの舞台裏を示した「どうぞ、お泊りを」、トム・ハンクスの下積み時代かと思える「配役は誰だ」がクリスマス・イヴ、一九五三年」で今も静かに潜伏する戦争の情景は『プライベート・ライアン』で余りの凄惨さに呆然するしかなかった冒頭15分を思い出させました。2019/01/01
吉田あや
97
トム・ハンクス初の小説にして定型の短編集に留まらない、意欲的で実験的なアプローチのある17篇。タイプライターを共通モチーフに、性別も時代背景もそれぞれ違ういろんな人生の何気ない数ページをサラリと開き、すっと退場させられる。引き際の仄寂しさがとても素晴らしく、再読する時「あの友人はどうしているだろうか」とアルバムを捲るような気持ちになるのかなと、その日が楽しみになる読後感。2018/12/22
ゆのん
96
俳優トム・ハンクスの短編集。タイプライターの収集家であるというトム・ハンクス。タイトルの『変わったタイプ』は人のタイプとタイプライターとの2つの意味合いなのかな。一つ一つの話が丁寧に書かれていて、自身の作品への愛情を感じる。時に主演映画を思い出させる描写もありかなり楽しめた。『へとへとの三週間』『グリーン通りの一カ月』『心の中で思うこと』『過去は大事なもの』『どうぞお泊りを』が特に良かった。772019/03/15
seacalf
92
『グーニーズ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『インディ・ジョーンズ』などハリウッド映画に夢中だった世代なので、往年のアメリカを体現したかのような世界観の話はどれもこれもたまらない。気の利いた文章にピシッと欲しいところにおさまる構成もお見事。「へとへとの三週間」「配役は誰だ」「過去は大事なもの」「どうぞお泊まりを」「コスタスに会え」が最高で、他の作品もすべて上出来。作者がトム・ハンクス?それを二の次にしてもいい面白さ。タイプライターという遊び心よりも彼独自の毒を入れてくれたら極上に仕上がったのにね。2019/01/04