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内容説明
キレる高齢者の脳のメカニズムを解き明かす。
駅やコンビニなどでやたらと駅員や乗客、そして店員を怒鳴りつけている高齢者が目立つ。こと暴行犯に限っては右肩上がりで増え続け、平成8年に比べて20倍もの逮捕者が出る始末だ。しかも、こうした「キレる高齢者」というのは、日本だけに見られる傾向であり、世界ではそのようなことはない。欧米では年齢を重ねるごとに幸福度が増すという研究結果があるにもかかわらずだ。
一般的には、男性ホルモンであるテストステロンがピークになる20歳前後がもっとも暴力的になり、他人に暴言を吐いたり、暴力を振るったりするのが普通なのだ。いったいなぜ、日本だけにこのようなお年寄りが増えたのだろうか。
もちろん、孤独や貧困といった外的要因があるのは事実だろう。しかし、本書では認知科学という研究分野から多くの実証実験を重ねて、「キレる高齢者」になりやすい脳のメカニズムを解き明かす。同時に精神的にも追い込まれていく高齢者を取り巻く日本の課題についても言及する。
高齢者にとっての3大不安要素は「カネ・健康・孤独」と言われる。そのあたりも本書を読めば、謎が解けるはずだ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
香菜子(かなこ・Kanako)
39
凶暴老人: 認知科学が解明する「老い」の正体。川合伸幸先生の著書。凶暴老人、些細なことでキレてしまう高齢者が増えているという報道はよく見聞きします。高齢者が凶暴になるには凶暴になるだけの科学的根拠がある。年齢を重ねれば誰もがいつかは高齢者になるのだから、本書で取り上げている老いの正体を高齢者と社会全体が正しく理解することが大切。高齢者を馬鹿にしたり批判したりするのは人として未熟なことではないでしょうか。2019/01/13
Isamash
30
川合信幸・名大情報学研究科准教授(1966年生まれ、専攻は比較認知科学・実験心理学)2018年発行著書。タイトルの印象と異なり、内容的には真っ当な科学的知見が述べられている。高齢者の凶悪犯罪は増加しているがそれは単に高齢者が増加したためと結論づけ。ただ高齢者は前頭葉の機能低下のために感情のコントロール力が弱くなっているのは事実の様。幸いに有酸素運動により抑制機能は高められるらしい。一方地方で姥捨山の習慣がかつて存在した様に、日本の社会には高齢者をよそ者扱いしている側面があることも指摘。共生社会推進を提唱。2024/03/01
carl
23
読んでいる最中は「なるほど なるほど」だったが、頭に残らなかった私の前頭葉の問題かも?と思ったので、まだキレる歳ではないようです。2021/01/20
mazda
23
前頭葉の機能低下が感情のブレーキを壊してしまい、結果我慢するとか怒りを鎮めることを難しくするそうです。加齢と共にこの低下が起きてくることは避けようがなく、そういう意味では高齢者が急に怒ることは仕方ないことかも知れません。当の年寄りは、年をとっても働きたいと考えている人が多いそうです。そんな彼らは必ずしも経済的に困窮しているわけではなく、社会とのつながりを求めていることが多いそうです。社会とのつながりが多いと生きがいを感じ、情緒が安定するとも。社会的に仲間外れにしないことが必要かもしれません。2019/02/08
leo
21
タイトルの"老いの正体"について知りたくて借りたのだけど、なぜ昨今報道で"キレる老人"が取り上げられるようになったのかということに関する考察に終始していた一冊だった。考察よりも、検証に採用されている実験方法の数々が興味深かった。2021/01/15