中国はここにある――貧しき人々のむれ

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中国はここにある――貧しき人々のむれ

  • ISBN:9784622087212
  • NDC分類:926

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内容説明

近代化の影で衰退する農村。問題の本質を浮かび上がらせ、大きな感情のうねりを呼んだ傑作ノンフィクション文学。人民文学賞受賞。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

まーくん

101
原題『中国在梁庄』。都市の繁栄の陰で荒れ果てていく農村。農村が民族の厄介者となり、貧困と病理の代名詞となったのは何時からであろうか?文学研究の大学教授となり北京に暮らす著者梁鴻は、20歳までを過ごした河南省の生まれ故郷梁庄を訪ね、村の実情や歴史を知るため大勢の人々へ聴き取りを重ねる。村には餓死者も出した苦しい時代や”改革開放”の始まりにより一時の小康を得た時代もあったが、今や若者は繁栄を謳歌する都市へ出稼ぎに行き、村には孫の世話をする老人や精神を病んだ人だけが残されている悲しい現実を目の当たりにする。2021/09/05

藤月はな(灯れ松明の火)

93
嘗ては中国の基盤だった農民たち。しかし、今や、時勢に切り捨てられてしまった彼ら彼女らの生活は、暗澹としている。作者が帰郷した時、人のいなくなった村の家々が如何に寂れていったのかを目の当たりにした時の衝撃が印象深い。嘗て、賑わっていた風景を知っているだけにその荒廃ぶりが身につまされる。そして語りに対し、村の出身でありながら都市でインテリとして住む為に「部外者」と位置づけられてしまう作者の意識との差は余りに深い。同時に「もし、彼女が村にいたままだったら村民達は彼女にあんなに語っただろうか」とも思ってしまうのだ2018/11/22

星落秋風五丈原

33
GDPが日本を抜いて世界2位というけれどここで紹介される農村は富裕のイメージとは真逆の中国。中国人民全てが豊かな暮らしをしているわけではなく格差がこれだけある。不満が噴き出したらこの国はどうなるのか?著者が故郷の人々にインタビューした内容を元に中国全土の普遍的な問題に迫る。2018/11/01

Sakie

19
原題「中国在梁庄」。著者は居住している北京から、故郷河南省鄧州市の農村へ里帰りし、研究の一環として村の人々に聴き取りをする。3つの時代が対比的だ。1960年頃、家族が餓死することが珍しくなかった時代を経て、美しい自然の中で貧しいながらも作物を育て、宗族が協力して生きた時代、そして現金収入を得るために一家離散し、人とのつながりや文化が分断する現代。著者が典型的な農民、表情の乏しさと呼ぶものが、彼らが致し方ない辛苦をやり過ごす力、裏返せば生命力の表れであると考えることができるものか、じっくり反芻してみたい。2021/08/21

BLACK無糖好き

19
中国文学の研究者である著者が、河南省の故郷の農村で、身近な人たちへのインタビューを軸に、中国の農村が直面している状況などを描いている。中国の現実では、農民は政治的にも文化的にも社会の厄介者で、忘れられた存在とのことだが、一方で、農村での暮らしは伝統、文化、道徳と、その土壌に深く根を下ろした数千年の民族の生活と深く結びついたものが内包されており、社会のあり方に安易に帰結するものでもないという。問題解決の道筋を制度的な面から模索するのではなく、普遍的な視点から捉えた所が本書が評価された所以だろうか。2018/11/21

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