内容説明
著者晩年の代表作『日本敵討ち異相』の元となった、著者が密かに書きためた未発表原稿から厳選。曾我兄弟、渡部数馬・荒木又右衛門、忠臣蔵など日本の敵討ちを描いた50年ぶりの奇跡の新作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
広瀬研究会
4
長谷川伸は、日本の敵討ちは独自の“格”を供えるに至ったといい、記紀の頃から父の仇は討つべきとされていたとか、頼朝が父義朝を裏切った長田父子にしたのは敵討ちというより意趣返しである等と説明する。森菊之丞は主君の敵を討ったが、そのことで父の仇として討たれたことを「武夫(もののふ)の冥加」と言って恩讐を残さなかった。このあたりで“格”というものが段々わかってくる。名前しか知らなかった荒木又右衛門の助太刀が、大名、旗本、さらには幕府を巻き込んで、上意討ちという展開になっていくというのは初めて知った。2023/03/21
Masakazu Fujino
4
長谷川伸の本を初めて読んだ。彼の小説・戯曲の背景に事実をきちんと把握しようとする姿勢があったのだと言うことがよくわかった。2019/03/27
うーちゃん
3
長谷川伸の作品を読むのは初めて。これは小説ではなく、古い文献を渉猟し、古今東西の敵討ちを集めたもの。事実に正確であろうとする故に、人間関係が複雑で固有名詞が多く、決して読みやすいとは言えない。しかし、その欠点を補って余りある多様な仇討の顛末が取り上げられている。圧倒的に有名なのは赤穂浪士だが、長谷川伸の評価は「これは敵討ちというよりも○○○だ」というもの(あえて伏字にした)。言われてみれば、なるほどその通り。その他、仇を討つまでに何十年もかかった例や、武士ではない町民による仇討もあり、とても勉強になった。2018/11/21