内容説明
「あったことをなかったことにはできない」安倍晋三首相と親密な関係といわれる学校法人加計学園が、国家戦略特区に獣医学部を新設した問題で、官僚トップの事務次官を務めた著者がなぜ「総理の意向があった」と記された文書の存在を認めたのか。「公正・公平であるべき行政が歪められた」として、安倍政権下で起きた加計学園問題をはじめ「権力私物化」の構造を糾弾する。そして、「道徳の教科化」や「教育勅語」の復活など、安倍政権が進める教育政策に警鐘を鳴らす。さらに、文部科学省という組織の中で、「面従腹背」しながら行政の進むべき方向を探し続けた38年間の軌跡を振り返る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
84
「今、いちばん会ってみたい人は?」と問われたら、躊躇うことなく会いたい人の一人が著者の前川さんです。わが日本で9年余の長期にわたって、思いのままに 権力をふるってきた、あの傲慢な安倍晋三首相に真っ向から「No!」と自身の意見を言った前川さんを頼もしく思いました。表題の「面従腹背」を座右の銘とし、毅然とする前川喜平氏に、僭越ながら惚れました。文部省入りしてから、省トップの事務次官を歴任するまでの38年間を綴った一冊は勉強になりました。たいへん面白かったです。2022/10/30
zero1
78
自殺者まで出た【モリ・カケ問題】で【行政が歪められた】と首相を批判した前川氏。文部省(当時)に入った彼が事務次官になるまで何に関わり、どう考えたか。教育は誰のもの?愛国と教育勅語、個人と国、拒否の権利に道徳と家庭教育(後述)。AL(アクティブ・ラーニング)に教員免許。八重山の教科書採択騒動(後述)に夜間中学。憲法と靖国神社まで言及。官僚はポストを得ないと権限を与えられない。ならば前川氏のように【面従腹背】か必要なのか。天下り問題で引責辞任した彼が【自由を得た】解放感は共感する読者が多い?2021/11/16
Willie the Wildcat
72
組織人vs.個人。悩み辿り着いた『面従腹背』。著者のこれまでの文部官僚経験を通した教育行政の歴史と見解は、政官の国家観と共に、教育問題を再考する視点を提供。『国旗・国歌の指導』は何かとControversial。祝日vs.学校行事、公立校vs.私立校など、一貫性の問題という感。但し、突き詰めれば、政官の胆力が問われている印象。『教育は誰のもの』では、憲法と国家を再考させられる。特に、前者からは”自由”。国を愛さない自由?!問題提起は納得。巻末のツイッター2017/3/25は、『眼黄鼻直』への転換期ですね。2018/09/08
それいゆ
52
前川さんの主義主張は私とは相容れないです。どうも政府の教育行政とは考え方が異なり、意に添わない仕事ばかりをしてきたのが前川さんなんでしょうか?面従腹背で仕事をしてきたということですが、高級官僚として充実、満足だったのでしょうか?私は、はなはだ疑問です。例えば、天皇制に反対、日の丸君が代に反対、道徳の授業に反対だという人が文科省の官僚としてやっていけるのか?前川さんの話を読んで、ひょっとしてそんな人もいるのかな?という気がしてきました。仕事がスムーズに進行するはずがないでしょう!2018/08/08
とよぽん
37
ラジオ番組「ピープル」にゲスト出演していた。前川さんの話がとても興味深いものだったので、さらに著書を読んだ。予想を上回る素晴らしい内容で、官僚の苦労や悲哀も感じられた。そして、自由の身になった前川さんの、文科省を外から見たアレコレを「へー、そうだったのか。」という思いで読ませてもらった。学ぶ人のための教育を常に考え、権力と戦いながら潔い生き方をしてきた稀有の人。今後は自由な一市民の立場からの発言、活躍を!2018/10/29