内容説明
古代ギリシアのヘロドトスは海賊たちを英雄とみなし、ローマのキケロは「人類の敵」と罵倒した。スペインとオスマン帝国が激突したレパントの海戦の主役は海賊であり、大英帝国を裏面から支えたのもカリブ海に跋扈するバッカニア海賊だった。19世紀、欧米の覇権主義で海賊は滅びたが、現代のソマリア海賊として甦る。キリスト教とイスラームの対立、力と正義の相克など、多様な視座で読み解く、もう一つの世界史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
99
古今●西(東はない)の海賊について。パイレーツオブカリビアンにはこんな背景がとガッテン!イタリアの海岸線に残る監視塔を見た時、この海の向こうからサラセン人の海賊が襲ってきて・・と思ったが、イスラム側にはイスラム側の論理と歴史があった。かつてリビアに駐在していた友人が地中海は南から見ると景色(物事)が違って見えると話してたことを思い出した。この本は偏りのない立場で書かれているが、それだけに、これまでの感覚はヨーロッパ側、キリスト教側からの見方と自覚した。いろいろな海賊の活躍?を知ることができた楽しい一冊。2020/12/21
かごむし
28
普通の世界史は、陸地の支配関係が中心軸となるが、本書は、海を視界の中央に持ってくるような内容だったから、視点が変わることで、持っていた知識が整理される。また、戦記風の記述が随所に挟まれとても読みやすかったのと、海の覇権(それはそのまま陸の覇権だが)の移り変わりが、大きな流れの中で把握できるのもとてもよかった。特に、中世のイスラム教対キリスト教や、大航海時代など、いくつかのテーマの理解が深まった。本書はタイトルに「海賊の」とあるから、テーマを絞っているような印象があるけれど、ただの「世界史」でもよかった本。2018/08/26
skunk_c
23
ヨーロッパ、特にイギリスの歴史は海賊なしには語れないし、ディズニーのアトラクションにまでなった「カリブの海賊」、あるいはギリシャ・ローマ時代の話など、エピソードがたくさんあり、豊富な図版もあって楽しく読了した。特に第6章「現代と海賊」で提起される「海賊を悪としてすべてを済ましてしまうのではなく、『国際社会』というわれわれの側も、本当に公正といえる秩序であるのかどうか」という問いは、ギリシャ時代から綿々と続く、あるいは墨子の「非攻」にも通じる、普遍的なものだろう。残念なのは倭寇に全く触れられていないこと。2017/10/03
まーくん
22
古今●西(東はない)の海賊について。パイレーツオブカリビアンにはこんな背景がとガッテン!イタリアの海岸線に残る監視塔を見た時、この海の向こうからサラセン人の海賊が襲ってきて・・と思ったが、イスラム側にはイスラム側の論理と歴史があった。かつてリビアに駐在していた友人が地中海は南から見ると景色(物事)が違って見えると話してたことを思い出した。この本は偏りのない立場で書かれているが、それだけに、これまでの感覚はヨーロッパ側、キリスト教側からの見方と自覚した。いろいろな海賊の活躍?を知ることができた楽しい一冊。 2017/08/11
緋莢
20
図書館本。「さらばのこの本ダレが書いとんねん!」で知って、興味を惹かれた本。『海賊の文化史』同様(ただし、この本の方が先に刊行されていますが)、古代ギリシアから 始まり(ヘロドトスが綴った逸話のひとつに、古代ギリシアの海賊王といえるポリュクラテスがあった)、<イスラームとの戦いを名目に、聖ヨハネ騎士団は地中海の 海賊となったのである>と十字軍の記述があったり、地中海に名を轟かせる大海賊・バルバロッサ兄弟、 その一人がウルージ(ウィキペディアだとオルチという表記もある)で、おおっ!となったり(続く 2024/10/07




