内容説明
今の日本に、こんなリーダーがほしかった!
昭和13年、青年実業家の瀬田修司は横濱に降り立った。関東大震災から復興した横濱は、ジャズが流れモガ・モボが闊歩する華やかな文化あふれる国際都市。折しも日中戦争が始まり、軍需景気にあやかりたい瀬田は、横濱一の大富豪である原三渓からの出資を得ようと、三渓について調べ始める。
実業家としての三渓は、富岡製糸場のオーナーであり「生糸王」の異名を持っていた。関東大震災では、復興の先頭に立ち私財をなげうって被災者の救済にあたった。また、稀代の数寄者として名を馳せ、茶の湯に通じ、「西の桂離宮、東の三渓園」と言われる名園を築いた文化人。前田青邨や小林古径など、日本画家の育成を支援……と、いくら調べても交渉材料となるような醜聞は見つからず、瀬田は苛立つ。
やがて「電力王」として知られる実業家、松永安左ヱ門に会った瀬田は、松永の仲介で三渓に会うことが叶う。
三渓園の茶室を訪れた瀬田は、そこで原三渓と話を交わしたことで、少しずつ考えを変えていく。
実は少年時代、瀬田には三渓にまつわる忘れ得ぬ記憶があった……。
※この作品は過去に単行本版として配信されていた『横濱王』の文庫版となります。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
246
関東大震災!明治大正と発展を遂げた日本に莫大な衝撃と被害をもたらした!悲観と絶望渦巻く中、復興を信じ私財を投じて尽くす実在の人物、原三渓を描いた作品。単なる偉人伝ではなく、苦難の末、彼に出資を得んとする若き実業家瀬田の主観でパズられる物語。期待した偉人の苦悩や葛藤は表れない。『己の王となりなさい』『貴方の境遇ではなく、貴方の心持ちが大事』『人と比べ続ける限り、満たされる事など永遠にありはしません』前半客観的過ぎて辟易していた物語が後半俄然、魂をもたらす!人間味という言葉、まさに味のある生き方を堪能‼️🙇2020/01/14
タツ フカガワ
56
太平洋戦争へ向かい始めた昭和13年、実業家を名乗る28歳の瀬田は、“横濱王”と呼ばれる大富商原三渓の商売敵や贔屓の芸妓、原家の元女中、日本画家の前田青邨らから三渓の人となりを聞いてまわる。そこから彼の醜聞や弱みを見つけ、それをネタに自分の事業に出資させようという魂胆だったが、出てくるのは高潔で優しく、芸術にも造詣の深い人柄だった。『木挽町のあだ討ち』のような手法で描く原三渓の評伝は、狂言回しの瀬田をはじめ登場人物の各個性も鮮やかで、最初の1ページ目から最後まで楽しい読書でした。2024/05/13
Book & Travel
28
大正から昭和初期の横浜の大実業家である原三渓のことを書いていると知り手に取ったのだが、彼の生涯を追った作品ではない。出資を得るために三溪のことを聞き回る少し怪しげな若手実業家・瀬田を中心に、三溪の実像を追いつつ、横浜の光と影の中で生きる人々を描いた物語である。関係者の話から三溪の人柄に迫る展開は、著者の「木挽町〜」にも少し似た構成。瀬田と三溪の因縁や、悲しみを抱えた者同士の交流など、心を掴まれる所の多い良い作品だった。横浜に何年も住んでいながらまだ行ったことのない三溪園にも、一度訪れてみたくなった。2026/06/23
名駿司
19
★★★★★ 実は三渓園は徒歩圏内なのだが、原三渓については芸術の庇護者という以外ほとんど知識がなかったので紐解いた。いわゆる人物伝ではなく、怪しげな自称実業家が三渓について調べていく筋立てでとても読み易い。時代は関東大震災~第二次終戦直後まで。三渓以上に横浜をとてもよく表している。三渓については誰が語ってもまるで聖人君子。本当かと疑問に感じながら読み進める。だが極めた人というのは、やはり高い位置から俯瞰しているのだろう。ただし戦後、三渓園が接収されなかった点にまだ秘密が残っているような気がする。2020/02/29
ちゃま坊
14
横浜を歩けば想像するのは明治期の日本。ここから世界の文明が流入し、絹を輸出して外貨を稼いだ。山下公園、ホテルニューグランド、シルク博物館を訪ね、原三渓のことを思い三渓園まで足を延ばす。さらに八王子へ続く絹の道をたどってみるといい。化学繊維の台頭でシルク産業は衰退したが、石油危機が長引けば、また復活する日が来るかもしれない。関東大震災から終戦までの横浜を描く。2026/06/01
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