内容説明
俺たちは踊れる。だからもっと美しい世界に立たせてくれ!
極道と梨園。
生い立ちも才能も違う若き二人の役者が、
芸の道に青春を捧げていく。
作家生活20周年記念作品として放つ渾身の大作。
(あらすじ)
1964年1月1日 長崎は料亭「花丸」
侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、
この国の宝となる役者は生まれた。
男の名は、立花喜久雄
極道の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、
喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。
舞台は長崎から大阪、そして、オリンピック後の東京へ。
日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。
血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。
舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、
その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
553
吉田 修一は、新作中心に読んでいる作家です。著者の作家生活20周年記念作品、まずは上巻を一気読みです。 本作の公式サイトも充実しています。 https://publications.asahi.com/kokuhou/ 続いて下巻へ。トータルの感想は下巻読了後に。2018/09/25
鉄之助
447
戦前の長崎・花柳界の賑わいから、物語が始まり、スッと小説の中に入り込めた。歌舞伎など伝統芸の世界が中心か、と思わせたがヤクザの抗争、人間の闇と光…など、壮大なドラマだがあちこちに話が流れ、中だるみ感も。下巻に期待。2019/03/03
パトラッシュ
443
長崎の少年が美貌と才気を見込まれて歌舞伎役者の弟子となり精進を続け遂には人間国宝にまでなる物語は「ジャン・クリストフ」以来の教養小説のパターンだ。しかし間違いなく著者は悪魔メフィストと魂を売り渡す代わりに現世のあらゆる快楽を体験する契約を結ぶゲーテのファウストを念頭に、日本一の歌舞伎役者になるため悪魔と取引したと自称する立花喜久雄を創造した。こんな人間が主人公では普通の芸術家小説にはならない。喜久雄は失敗と挫折と重ねながら他者の運までもわがものに成長していく。その周囲には無数の死体を残して。(下巻に続く)2019/10/29
ウッディ
429
ヤクザの親分の子供として生まれた喜久雄は、抗争で父を失い、故郷の長崎を追われ、歌舞伎役者の花井半二郎に引き取られる。そこで歌舞伎に魅了され、同い年の半二郎の息子俊介と切磋琢磨しながら、稽古に励む喜久雄は、いつしか半二郎から後継者に指名される。懐かしい昭和の雰囲気を感じながら、未知なる歌舞伎の世界に少しずつ惹かれてゆく自分がいる。歌舞伎役者としての仕事が上手くいかない喜久雄に挽回のチャンスはあるのか?どのようにタイトルに繋がるのか、期待しながら下巻にうつります。2019/04/20
yoshida
362
長崎のヤクザの組長の息子の喜久雄。抗争で父を殺害された喜久雄は、大阪の歌舞伎役者の花井半二郎に預けられる。喜久雄は芸の道に惹き込まれ、努力と才能で女形の歌舞伎役者となる。半二郎の実子である俊介と並び賞される。半二郎が己れの代役に喜久雄を指名したことから俊介は出奔。喜久雄は栄華と苦難の芸の道を歩いて行く。辛酸を舐め、再起を誓う喜久雄を待つ未来は如何に。血筋を持たない喜久雄にとって、後ろ楯が次々に去ってからは苦難が続く。歌舞伎界の変遷も知れる。吉田修一さんの作家としての幅広さを思い知る。思わず一気読みの力作。2019/03/17