内容説明
「おれは鈴守じゃ」
東京から電車を乗り継いで七時間、バスに乗り換えてさらに一時間。連翹の花咲く四国の山あいの町で、十四年前、俺は神さまに出会った――。
幼い頃から続けてきたピアノに限界を感じる中学生・冬弥、疎開先で出征した夫との子を宿し心細く終戦の年を迎えた女性・和、芽が出ない俳優業への未練を捨てきれない三十八歳のフリーター・鵜木、七十年前にお祭りで言葉を交わした不思議な少年に思いをはせる美鈴……
小さな神さまとの出会いが、彼らにもたらしたものとは――人気作家が心を込めて描く、温かな涙が溢れる五つの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
タイ子
50
5つの時代に生きた人たちと鈴の神さまとの出会いの不思議な物語。四国のある山間の小さな村を舞台に、夏休みに祖父の元を訪れた少年、戦中に疎開してきた身重の女性、先が見えずに嫁いだ姉の元に帰ってきた売れない役者など、普通の人には見えない神さまの姿が彼らには見える。そして、その出会いが彼らに生きる喜びを与えてくれる。この神さまがとにかく可愛い。人間界に舞い降りた神様だから世情に疎くて会話に思わず微笑んでしまう。ラスト近く「とうとう、夏休みがきたのじゃな」ってセリフで思わず涙が…。いい本でした。2018/08/30
樋口佳之
40
いいお話だなあ。元ポプラ社らしいので、自分からは孫世代が主な対象なのでしょうが、ホロリとしてしまいました。おじゃる丸彷彿の神さまの描写が柔らかいクッションを与えていますが、登場人物、皆さんそれぞれに岐路にあり、その選択に力を添えてくれます。オビの惹句通りですね。2025/09/22
ひさか
23
2010年第5回ポプラ社小説大賞最終候補作(入賞せず)の連翹荘綺譚に大幅に加筆修正し、2012年7月ポプラ社から刊行。2018年7月若干の修正を加えて、だいわ文庫化。知野さんのデビュー作。5つの連作短編。自らを鈴守と呼ぶ鈴の神様が登場するファンタジー。神様の安那が可愛い。言葉使いから、NHKのおじゃる丸を連想してしまいます。1話目の鈴の神様の話が良い。5話目が、その14年後で、締めくくる話なのだが、1話目ほどには、心に響かなかった。2〜4話は、それなり。2020/10/14
香翠
15
田舎の神社に住まう神さまを軸に、彼らと小さな交流があった人々を温かく描いた作品。時代によって生活の状況は異なるけれど、人懐こく愛らしい神さまはするりと彼ら彼女らの中に受け入れられ、大切な存在となっていく。図書館の棚を巡っていた時に何となく目に留まり読み始めましたが、年の瀬に良い作品を出会えてちょっとしあわせ!2022/12/31
ごへいもち
14
いいなぁ、この世界。こういう本をもっと読みたい今の気分2025/08/28




