内容説明
「売れないものかき」の松下センセは書くのも遅い。過去の著作はどんどん品切れ重版未定の絶版扱いになり、病を押して散発的な注文原稿をこなしても生活は綱渡りだ。そんな作家が一番大事にしているのは夕方の妻との散歩。身の回りの自然、季節の移ろいを全身で体感し、河口に集まるカモメたちに餌をやる日々。子供たちや仲の良い友人たちと時間も楽しみの一つ。安上がりだけど満ち足りた幸福がここにある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
qoop
7
環境問題に邁進した著者が、自身の生活をユーモラスに自然体で綴ったエッセイ集。気概に満ちていながら気負わない姿は、個人的に70〜80年代左派運動に携わる理想型にも見える。翻って現在、著者を模して模範になるとは思えない。改めて考えると、運動に携わるロールモデルは更新されていると言えるのだろうか。外面だけの装いではないのか。この気持ちを再考したい。2022/10/18
りい
1
夫婦の仲睦まじさから温かいものを感じた。特に奥さんがとても楽観的ないい人。こんな人になりたい。 お金は大切なものだけどそれが全てではない。よく言われる言葉だけど「清貧」という言葉に惹かれており「貧乏」には興味がないと書かれていたのがぐさっときた。2021/06/17
クリフトン
1
自身を「松下センセ」と書くのは妙だと思いつつ 奥さまの素晴らしさに圧倒される でもそれは「並はずれた愛情で洋子さんをがんじがらめに縛っていることに気づいてない」のかも知れない 「市場の中まで舞い込んできて魚をねらう」魚屋の敵でもあるカモメに 食パンを与え憶えてくれていないなら止めようかと悩む… 「ビンボー」と引き換えにした少し昔には当たり前だったものが此処にはまだあるようだ2019/01/11
ダイキ
0
今は亡き福田和也さんがまだTwitterを更新していた2010年に、「面白い」と紹介していた本。1990年から1995年までに書かれた随筆。同時代人であれば恐らく嫌悪感を抱いて堪えられなかったかもしれないが、こうして時を経て、ひとつの時代のささやかな記念碑として読む分には「古き良き」オールド左翼の日常と生活という感じで、寧ろ好ましさばかりが読後に残る。存命の同時代人としては、同じく福田さんが「日本のセリーヌ」と評した塩山芳明氏が、本書のような文章を、もっと支離滅裂で滅茶苦茶に、今もブログに書き継いでいる。2025/06/07
go
0
佐高信さんが自著で触れていた作家。予想以上に面白かった。 決してくさったり悲観したりしない、周りへの優しい眼差し。2019/08/16