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内容説明
日清・日露戦争に勝利した日本は帝国化に向かうべく、また青年層の贅沢化と個人主義化への懸念を払拭するために、国民教育における愛国教育を推進した。それはやがて妄想レベルにまで進み、三つの象徴的事件――哲学館事件、南北朝正閏論争、進化論問題を引き起こす。これらのスキャンダルから、明治初頭の実学優先・合理主義の教育が教養・精神主義に転換し、国家と天皇の神聖化、帝国神話強化に向かうメカニズムを解読する。教育の右傾化が危惧される今こそ必読の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
oooともろー
5
哲学館事件、南北朝正閏論争、進化論…明治時代の日本がいかに帝国化していったのか。 現在の日本の現状とシンクロ。2019/07/30
onepei
3
小さな動きが次の動きをよんで、無意識のうちに大きな潮流になってゆく一例か。2018/11/07
yoyya
2
本来ならば学術的に議論されるべき事柄が、政治的意図によって紆余曲折する様が描かれている。たどり着きたい世界を思い描いて、そこから捻じ曲げられる道徳観、利用される歴史、 歴史上のどの方も真剣であるだけに、社会をつくっていくことの難しさを感じる一冊。2019/02/07
Masatoshi Oyu
2
明治期の、教育にまつわる四つの事件を通して「なぜ日本は戦争の道を突き進んでしまったのか」を考える。 この本から得られる教訓はおそらく二つある。 第一に、民間の企業人こそ高い倫理観や公共心が必要である。教科書の国定化に道を開いた教科書疑獄事件では、教科書会社の贈賄事件の頻発が背景にあり、国家が教育に介入を強めるという問題を隠蔽してしまった。 2019/01/06
sober
1
明治期の教育に関係する事件を主に取り上げている。教科書疑獄事件は、端緒(列車に忘れられた手帳により発覚)からしてミステリめいたスリリングな展開に思えたが、筆致は抑えられており、とてもよい。国定教科書はリンカーンやナポレオンの記述が削除されるなど、内々の騒擾を忌避しているらしいが、西郷は逆に平和の象徴として政府に利用されていくようだ。南北朝正閏論争や進化論の項は発展途上な学問の成り行きを伺い知れる内容となっている。不学な私は、現在に連なる皇族が北朝の血筋でありながら南朝を正統と発表した事実に驚きました。2019/03/17