内容説明
妖しい洋館が舞台のロマネスクな人間模様。
大都会・東京の真ん中に静かに佇む洋館に心惹かれた「私」は、得体の知れない不動産屋に誘われるままにその館を訪ねることになる。
そこには幻想的な少女・霧子や近寄りがたい老主が住んでいた。身を固く包んで口さえ開こうとしない霧子に、私の興味は膨らんでいく。
主である霧子の祖父の依頼で、彼女の家庭教師として洋館に同居することになる私……。そこで、この一家の住人たちは数奇な運命に翻弄され始めるのだった。
「ある夕陽」で芥川賞を受賞した日野啓三が幻想的作風で新境地を開き、泉鏡花賞に輝いたロマネスク小説の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y
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簡潔でかつ正確な描写を積み重ねることで領域を構築していくような小説。「光る荒地」という言葉が出てくるなど、作者のテーマや感覚が全投入されている長編小説だと思う。長編ならではの物語の構成もあるが、そこはこの小説の旨みではないように思われる。それよりもこの年代の都市に対する考察、幻想的で一瞬ホラー小説のようでもある空間がこの小説で表現したかったことなのではないかと思う。開高健「巨人の玩具」でも自らのビジネスに絶望する男が描かれているが、いつの年代でも社会の一員として働く葛藤からは逃れられないのだな。2023/08/09
眼鏡堂書店
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感想はコチラ https://glassesbookstore.hatenablog.jp/entry/2022/12/04/0930222022/12/11