内容説明
科学はストーリーに満ちている。科学研究の手法も、科学を伝えることも、何かを語るためのプロセスだ。
著者が主張するのは、現実社会における「物語(narrative)」の力を一世紀にわたって学び、応用してきた人々に対して、科学者が目を向け、その助けを求めるべきだということ。
物語によって脅かされるものは、何もない。物語は、人間の文化のあらゆる側面に浸透している。科学者たちは、科学が物語のプロセスであること、物語はストーリーであること、したがって、科学にはストーリーが必要であることを認識しなければならない。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
62
久方ぶりにリアルの会議をして、会社の同僚から勧められ、貸してもらった本。とても意義深いし、基本コンセプトであるand, but, thereforeを意識しながら英語プレゼンに臨んだら、とても評判がよかったので、実用的でもあります。ただ、申し訳ないけどちょっと翻訳がイマイチだし、そして何より話が冗長。最後に3ページくらいでまとめがあるんですが、これがものすごく良くまとまっていて、ここだけ読めばよい、かも。。。と、ABTメソッドを意識しながら書いてみました。2021/03/13
タナカ電子出版
42
この本は科学者でありながらエンターテイメントの仕事していた著者ランディ オルソンの分析体験本です。科学の教員にはおすすめな本になっています。この本の構成はヘーゲルの弁証法にならい テーゼ アンチテーゼ ジンテーゼの3本柱で構成していて物語の必要を投げ掛けてきます!確かに2時間の講義は集中力は持たないが、2時間の物語は楽しみながら観れる。そのエンターテイメント性を科学の世界に持ち込もうとする意欲的提案本です!2019/01/21
kochi
18
「科学のコミニュケーションで不足しているのは物語だ」と主張する著者は、「そして、しかし、したがって」という流れに特徴のあるABT構造と、物語に対する直感を鍛えることを勧める。実は私の仕事の関係の文章はこのABT構造に極めて近いもので、本書の主張に特に違和感がないし、この構造で「納得する」という感覚もよく理解できる。一方、科学に過度な「物語」を期待する/されることの危うさも想定できるので、バランスというものが大切であろうし、そこが難しいのだろう。という風にABTの形にまとめてみましたが、伝わりますか^_^2021/02/21
月をみるもの
15
ABT(And, But, Therefore)テンプレートとは、いわゆる起承転結である。それは特に目新しいものではない。しかし、因果を求める人間の認識メカニズムは AAA (And, And, And,,,, = 単なる事実の羅列)テンプレートには耐えられない(たとえそれが真に「科学的」な結果であっても)。それゆえ、多くの人々に科学の成果を届けたいと思うなら、ABT テンプレートの採用は不可欠である。← ABT テンプレートを採用してみたんですけど、わかりやすいですかね?2019/11/18
xyzw
10
科学とストーリーという、一見すると相反するような要素がもつ関係性について述べた本著。筆者が指摘するように、一般の人々が想像する革新的で華々しいイメージとは裏腹に、科学界は旧弊で保守的な集団だ。新しい手法には常に懐疑的であり、定着には長い時間を要する。筆者もその点をよく理解しており、科学界におけるナラティブの欠如を、(ハリウッドに代表される)ストーリーテリングに長けた集団への外部委託によって解決するアイデアを提示する。2020/02/10