内容説明
19世紀初頭、世界地図の中で樺太は唯一謎の地域だった。樺太は島なのか、大陸の一部なのか。樺太調査に挑んだ間宮林蔵は、苛酷な探検行の末、樺太が島であることを確認する。その後、シーボルト事件に絡んで思いがけない悪評にさらされ、さらには幕府隠密として各地を巡った、知られざる栄光と不運の生涯を克明に描く。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
121
間宮林蔵。樺太が島だと世界で初めて発見。樺太北端の海峡は「間宮海峡」として世界に知られる。波乱の人生。農民の子だが、土木工事に興味を持ち幕吏の目に留まり役人へ。測量術を学び千島や樺太、蝦夷の地図を作る偉業を為す。樺太ではアイヌだけでなくギリヤーク人の協力を受け、清の支配する東韃靼へ渡る。多大な苦労により樺太が島であることを確認した他、ロシアの進出状況まで確認する。その後は幕府隠密として密貿易の情報を得るなど激動の生涯だった。後半生は初めて知ることばかり。改めて吉村昭さんの取材力に感嘆。意義深い読書時間。2021/12/16
読特
96
樺太は島か半島か。サハリンと樺太は別物か。アイヌ人を説得し、ギリヤーク人と協力し、山丹人をかわし、当時の世界地図上のただ一つの謎に決着をつける。”間宮海峡”のその人物を描いた小説。…つくばの農民の子として生まれ、地理と算術の才能を買われ役人に登用。北海道の地理を探索。海峡発見後は、幕府の隠密となる。シーボルト事件発覚のきっかけを作ったとされ、洋学者らからあらぬ恨みを買う。日々足の鍛錬を怠らず、高齢まで全国を行脚。生涯独身。時折寂しさを感じながらも、プロ意識を欠かさず、激動の時代の人生を全うしたと想像する。2024/05/26
ともくん
80
樺太が島であることを、初めて確認した人物。 間宮林蔵が、類まれなる探検家だということは、知識にあった。 しかし、その後、隠密として暗躍していたことは知らなかった。 己の探究心、プライドのために生涯を捧げた林蔵。 日本各地、そして、己の人生を颯爽と渡り歩いた。2019/08/23
NAO
75
江戸末期、樺太の最北端まで探検して島だということを世界で初めて立証した間宮林蔵の旅を描いた歴史小説。間宮林蔵の命懸けの樺太北部探検を描いた場面は鬼気迫るものがあるが、この作品には間宮林蔵だけではなく、大きく動く時代を生きた人々が活き活きと描かれていて、これがまた何ともいえず面白い。間宮林蔵が樺太探検にあたって教えを請い、羅針盤や精巧な磁石を借りた伊能忠敬。日本全図や間宮林蔵が記した北海道地図を日本国外に持ち出そうとしたシーボルト、安政の大獄で命を散らした高野長英も、間宮林蔵と面識があったという。2024/03/05
大阪魂
73
間宮海峡は知ってたけど、林蔵さんと二宮金次郎となんかごっちゃにしてた💦ロシア船が択捉、国後に上陸するとか海外の船が鎖国日本を脅かすよーになってた江戸時代1800年過ぎに北方の状況把握のため、日本が南の方だけ支配してた樺太の北の方、その対岸の清領まで探検いかはって世界で初めて樺太が島ってことを発見しはったのが林蔵さん!その経験買われて隠密になり藩と海外との密貿易発見したりシーボルト事件とかと関わったり、水戸斉昭の北海道水戸藩化計画にも関与!英雄ちゃうけど思いむちゃ強かったゆーのが成功のキモやったんやろねー!2024/02/23




