内容説明
哲学は断じて浮世離れした学問などではない。これこそ、現実と切結び、それを新たなまなざしでとらえかえすための最高の道具なのだ。ニーチェの思想“パースペクティズム”を軸にして、私たちが一見自明に思っている「文化」のあり方、「わたし」の存在を徹底して問い直す。世界が生成する有様を描きながらも、なぜ多くの哲学が「絶対の罠」に取り込まれていったのかもあわせて論じる。新しいタイプの哲学入門書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いかすみ
1
ニーチェ以前と以降の哲学を分けて、前者は真理などの固定的・脱時間的価値観を求めるのに対して、後者はそれを否定して生成を肯定する。ニーチェの言うパースペクティズムとは「一瞬の眺望を固定し、実体化し、あたかも永遠の存在であるかのうように錯覚してしまうメカニズム」のことである。すべては<流動的自己形成態>によって生成し、真理や自我などの<内生的絶対性>は根拠が無いのだ。このようにパースペクティズムを批判することによって、普遍的真理や自我を流動化し、「増殖」による「多様化」がもたらされるのだ。2024/11/08
しゃんぷーしょく
1
哲学について書かれた本を読むのは苦手である。読んでもよくわからないうえに、現実と結び付きが見えないから。しかし、この本は具体例が豊富で、哲学の考え方が非常にわかりやすかった。この日常で生きていくには、批判的な目線だけでは生きていけないけれど、すべてを甘んじて受け入れているだけでもだめなのだろう。こういう本を読むと、文系学部は減らしちゃだめだよなと思う。2016/05/25
なつき
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【はしプロ哲学19】『哲学で何をするのか 文化と私の「現実」から』読了。「文化」という一貫したキーワードで、おもに自我についてさまざまな側面から論じていく。読みやすい文章だが、内容はかなり高度で、新しい発見もたくさんあった。参考文献表は、「現代で」哲学を志す人間には役立つだろう。2017/05/14