内容説明
第1回角川文庫キャラクター小説大賞隠し球が、満を持してデビュー。涙なしでは読めない、ダメな父と健気な息子の不器用な物語。
【ストーリー】
夏のある日、しがない30代男・奥田狐のアパートを訪ねてきた天使。その小さな天使は汗をかきかき顔を上気させ、曇りのない目で狐を見つめる――天使の名前は遊。離婚により離れ離れになった息子だ。突然現れた息子の登場に、狐に訪れたのは嬉しさより、むしろ得体のしれない者に対峙したときの「恐怖」だった。こうして「ダメ親父」と「天使すぎる息子」のひと夏の生活がはじまった――自分のことしか愛せないダメ男に、必要以上に気を遣う健気な息子、そんなダメ男をなぜか慕うヤンキー娘、そして、狐のすべてを知る元嫁。親子であって親子でない父と息子は、親子以上に親子な関係を模索するが……?
「アバウト・ア・ボーイ」「とんび」に続く、切ない親子の物語。
装画/柳沼行(「ふたつのスピカ」など)
クズ男のA玉/少女とサボテン/幸せのバームクーヘン
※本作は、第1回角川文庫キャラクター小説大賞応募作「仙人系クズ男のA玉」に書き下ろしの2編を加え、文庫化したものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そる
255
この感情、難しい。心当たりがないので共感ができない。男性なら共感できる人もいるんじゃないかな。キャロンの感情は女だからか理解できる。コンの様なクズ男、全部揃ってなくても一部持ってる人はたまに見かける。遊はいい子だがクズ男のコンに恋してるようだ。この2人は恋愛してる。でも叶わなくて心に穴が開いたまま。そして2人とも幸せになるのが怖い。人生、愛、幸せについてとても考えさせられる話でした。「「(前略)人間、空腹のままやったら我慢できるけど少しなにか食べてしもたら最後、もう飢えに耐えることはできへんねんやぞ」」2019/10/26
いつでも母さん
222
クズでサイテーの男・コン!けれど、愛すべきコンはコンのままで、それだけは真実ー幼いときに別れた息子・遊との交流で少しずつ愛って幸せな気持ちが心を占め、遊にとっての何者かになりたかったコン。(そもそも狐って名前もどうかと思うけれど)50になり子供が産まれる遊夫婦に一緒に東京行きを提案されるが・・男の人が父親になるのはいつなんだろう。人はいつ大人になったと自覚するんだろう。そんなことを思った。『大人になるってことは、身近な大人を超えること』分かり易い言葉だ。私はまだ大人になりきってはいない。2019/09/26
mariya926
162
去年のカドフェスから気になっていた本だったので読めて良かったです。思っていたより父親であるコンがクズでした。周りにいた女性は素敵というか、社会的には自立できていましたが、これでもコンのクズっぷりを救えるほどではなかったです。ちなみにここに書いているクズというのは、本文でも何度も使われていたので使っていますが、愛あるクズです。その反対に息子である遊の素晴らしさ。そりゃ父性も開花されますよね。周りにいる大人を越えた時に大人になるって言葉に納得しました。越えちゃっていいんですね。2020/09/18
ゆのん
143
離婚によって離れて暮らす父親に2年ぶりに8歳の息子が会いにくる所から物語は始まる。元妻を含め周囲の人間からも、読者からもクズと称される父親。確かに読み始めはクズだなと感じる。それでも父親を愛する息子にキュンとなるが、息子への愛情に気付き溢れ出る父性愛に戸惑いながらも不器用に必死に息子を愛する父親に心打たれた。読みながら『本当にクズだな…。』とこちらまで泣き笑いの顔になってしまう。相思相愛の親子。体は離れていても2人とも幸せじゃんと暖かい気持ちで読了。2019/10/05
やっさん
137
★★☆ 趣味も定職も意欲もないバツイチ男だが、愛する息子に慕われ、若い女と半同棲し、どの職場でも人望がある。こういう人、実際いるよね。。。終盤は泣き所らしいが、残念ながら感動は共有できず。2020/02/09