内容説明
20年近く地道にある省の役人を勤めてきた川島留吉は、ふとしたきっかけで役人仲間と麻雀を始める。麻雀が弱い川島は負けが込み続けるが、ある日、川島の官庁に出入りの外郭団体の職員から自宅での麻雀に誘われる。そこから川島の地獄の日々が始まった――。(表題作) 俳句仲間と野鳥の声を録音しに行った軽井沢での殺人事件を扱った「二つの声」も収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レモングラス
91
表題作のみ読了。先に読んでいた夫が何度も吹き出していたのを見て、待ちきれない思いで続けて読んでの一気読みでした。松本清張作品で、ある省の課長補佐がときたら何だかもう後が想像できたりもして笑ってしまう。勤勉で律儀で地道で今日まで二十年近く役人生活をしてきたというのに、ふとしたきっかけで役人仲間と始めた麻雀で負けが込み、なんでそんなというくらい転落していく。日常が崩壊していく中で殺人事件の関係者にもなってしまう。ラストの3行はもうため息しか出ない。いや、やっぱり笑った。2025/02/14
キムチ
51
もう一冊がうんざり100%で進まない。これを浮気。でも、「二つの声」表題の2篇は読み易さ抜群ながら、特に後者は唾でも吐きたくなるようなまさに「虫3匹」の嫌な小心者。読むのが嫌になった。非情な世界にあって・・と勝手に言うがそれが原因で転落していく人生じゃない。自分の心が原因・・はたから見れたもんじゃない。妻もいて子供2人の典型的小役人・・はぁ。もう一個は、粋な野鳥観察のおっさん連中・・一皮剝くと。清張の俳句の巧みさは賞賛に値するけど、作中の輩はげっそりの生臭さ。2024/10/25
TATA
43
母親文庫。初版は1977年、ほおー。中編二作。普通の生活をしていた人達の側に発生した殺人事件。痴情のもつれと言えば話は早いが、どよーんとした雰囲気が漂う二作品でした。ややこしい殺人事件を扱った小説をこれでもかと読んでいる者からすれば、どうしても平板な印象が強いものの、40年以上前の作品と思えばあらためてそのクオリティの高さにうならされますね。あと、賭け麻雀は止めましょう。身を持ち崩すだけです。2018/06/27
竹園和明
40
虚無的な毎日を送るしがない小役人が、友達欲しさに安易に賭麻雀の誘いに乗り、カモにされドツボに嵌ったあげく殺人事件に巻き込まれるという悲惨な話『弱気の蟲』。犯人を主人公に置くのではなく、容疑を疑われた男に関わりその証言が重要な意味を持つ事になる男が主人公で、彼の窮する姿が気の毒でもあり滑稽。暗く気弱なくせにカネには執着する男を小役人に設定したのは著者らしい判断。松本作品の割には俗っぽいが、完成度は決して低くはない。夜の森で野鳥の鳴き声を収録したら争う男女の声を拾ってしまった騒動を描く『二つの声』を併載。2024/12/24
10$の恋
30
中編2作。両作品単体でも十分力作だと思う。なんか得した感じ。1編目の「二つの声」は、野鳥の声の録音に偶然入った男女の話し声。その後死体発見。殺人事件の謎が徐々に剥がされていく。男女関係恐ろしや。表題の「弱気の蟲」は、真面目一本槍の孤独な公務員が、職場仲間に誘われた麻雀で遊ぶ魅力を知り、やがて職場以外でも麻雀を打ち出す。勝って負けて勝って負けて負けて負けて大負けして…。気が付けば借金で火の車。麻雀相手は三人グルだと気付くのが遅かった。それが殺人事件にまで巻き込まれ、四面楚歌…。久しぶりの松本清張を堪能した。2025/04/30
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