内容説明
東京を離れた別荘地で、自動人形の発明に没頭する偏屈な父親・南瀬隆と、その世話をする健気な年頃の娘・蔦子。横暴な父の言動に翻弄されながらも、新しい時代の生き方を模索する若い女性の姿を描いた異色作。あの半七捕物帳の執筆開始からほどなくして、読売新聞に連載されたまま、ついぞ単行本化されることがなかった幻の長編が、100年の時を経て初刊行!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みゆき
14
自動人形の発明に没頭する偏屈親父とその世話をする娘。この親子を取り巻く人々の愛憎劇がサスペンスタッチで描かれる。娘の蔦子を自分の意のままに操ろうとするが、それが無理な所以、隆は人形に思いを託したのではないか。哀れな父親像が浮かび上がる。悪人と善人の対比が鮮やか。狂気に取り憑かれた人間ほど恐ろしいものはないのかもしれない。現代仮名遣いと新字に改められているとはいえ、1918年の作品とは思えない瑞々しさ。洗練された文章はサラサラと水が流れるようだ。ファンにはたまらない長編です。2022/05/20
名駿司
14
★★☆☆☆ 初の書籍化という長編。勝手に怪奇小説を期待していた。確かに狂気は描かれている。だが深みや恐ろしさまでは感じない。むしろ時代性が伝わる作品だった。新聞小説だったと、読後に気付いて納得。さすがに文章はとてもいい。2020/01/29
Kotaro Nagai
3
本日読了。本書は大正7年(1918年)読売新聞に連載され今まで単行本化されなかった作品。ヒロインの蔦子は気むずかしい発明家の父を持つ二十歳の理知的な娘という設定。そこに軽薄な従兄弟の連三、蔦子と対照的な感情的な娘の麗子、父の助手麻雄、村の青年六太郎の5人の若者が主な登場人物。この作品では幽霊とかミステリーの要素はなし。ごく普通の小説として人物の心理描写に力点が置かれている。大正7年の若い女性としては、蔦子は感情より理性的に行動するように描いていて興味深い。綺堂にこんな作品があったとは少々意外でした。2019/02/21
MIRACLE
1
作者が大正七年(1918)から読売新聞に連載した通俗小説。発明「狂」の父親をもつ女性が主人公の日常を、自堕落な貧乏貴族の従兄弟との結婚問題を軸に描いている(題名は主人公の父親が製作に没頭するからくり人形からとっている)。当時の女性は「人形」すなわち、親のいいなりだった。しかし、主人公は叔母からの遺産で経済的に自立しているという設定のため、父親の結婚話に対して、言うことをきこうとしない。そのあたりが、当時の読者には新鮮だったのかもしれない。だが、当時の風俗を知る以外、毒にも薬にもならない退屈な作品だった。2025/07/06
はかせ
1
いつも名作とはいかないだろうが、刊行されなかったわけもわかる。2019/05/09
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