内容説明
文明が野蛮に転じ、嘘で動く世界にあって、日本と日本人はどこへ行くのか。本書はグローバリズムを批判し、国民経済を重視する立場から、こうした問いに正面から向き合う。東西さまざまな思想家の考えを紹介しながら、社会と人間の基本的なとらえ方について、わかりやすく、説得的に示していく。進歩という発想と民主主義のあり方が限界を示し、ニヒリズムが世界をおおう危機の時代にあって、よく考えるためのヒントがここにある!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
20
保守論客による現代日本論。雑誌連載の掌編を集めたもので、明晰な著者らしく読みやすい。また、いわゆる護憲論などに対する批判は切り口が鋭く爽快さすら覚える。しかし一方でどうしてもぬぐえない違和感も。現憲法下の日本のあり方への疑念はともかく、著者の描こうとする国家が今ひとつよく分からないのだ。頭のいい人なので、下手なことは書かず反撃を受けない書き方なのだが、その結果「自力防衛」以外の日本のあり方がくっきりしてこない。それと分かっているのにわざと「書かない」部分があるなとも思った。確かに考えるきっかけには良いが。2017/12/05
はな
11
政治は苦手な私だが、なぜトランプが大統領になったか、安全保障条約のことや、テロがどうして起こるか、基本的なことが分かった!(気がする) 。 アメリカは自らの、自由民主主義などの価値観は普遍的であり、その価値観の世界化を目指す。かなり例外的な国。日本はアメリカ的価値は普遍であると受け入れ、日本の文化、価値観は日本独自のものだとする。(矛盾に気がつかない) プラトンの政治理論→ 「善きもの」を見とおすことができるのはほんの少数の「哲学者」だけ。 民主主義のもとでは「哲学者」の見解は無視される。↓2019/07/13
oooともろー
5
近代的な価値観「自由」「民主主義」が行き詰まっている現代の日本や世界。希望は日本の歴史に根ざした価値観がまだ私たちの精神の奥底に残っていること。2017/11/27
田中峰和
4
著者の思想の根底には、敗戦国日本がポツダム宣言は受諾させられたもので、侵略者としての罪を認めない意識がある。大東亜戦争は日本の軍国指導者による、自由や民主主義世界秩序への挑戦であることは誰にでもわかること。だが、著者の戦勝国批判は複雑だ。米国が戦争指導者を処罰し、日本を世界秩序へ編入するため、東京裁判と日本国憲法を押し付けた、勝者の身勝手と解釈している。相も変わらず押し付け憲法は無効だとする著者は、集団的自衛権は憲法違反と唱える憲法学者を批判する。憲法ではなく、防衛を議論すべきとの意見には一理あるのだが。2018/07/17
Viola
4
国家とは、国民主権とは何か、民主主義による政治の可能性は、とぼんやりとしか理解していなかった言葉の定義をしっかりと理解させてくれる。西欧の文化を良きものとして植え付けられ続けている日本は、歴史の事実と我々の価値観を正しく理解し受け入れることからこの先の国家造りが始まるのだと思える。佐伯氏の著書はまた読みたい。2018/05/23