内容説明
原発事故のため立ち入りさえ許されない地域で、行方不明の家族を捜し続ける人々。
当事者に寄り添い、“福島の現実”に肉薄した慟哭のノンフィクション。
〈3月11日のあの日以来、世間では様々な言葉が飛び交ってきた。「絆」「復興」「がんばろう日本」「脱原発」。そのどれもが、「日本」や「社会」といった大きな主語で語られる言葉だった。だがあの震災の当事者たちはそんな言葉に構う暇もなく、ただあの日から続く目の前の現実の中を、一日一日、生き抜いてきたのである。もし「福島の現実」というものがあるとしたら、その一人一人が積み重ねてきた日々のことなのかもしれない。〉――「あとがき」より
家族が行方不明になったにもかかわらず、原発事故で地域が封鎖され、捜索活動さえままならなかった人々。
「生涯福島のために尽くす」と誓った東京電力幹部。
彼らは何を思い、いかに行動し、“震災後の日常”をいかに生きてきたのか。
元テレビマンが地を這う取材でまとめ上げた渾身の一冊。
天童荒太氏推薦
〈真実を知ることが希望につながる。希望を信じて生きることが失われた命への誠実な祈りとなる。〉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あっか
60
著者による魂のルポ。正直、読み始めるまで勇気が要りました。でも、語弊があるかもしれませんが読んで良かったし知れて良かった…行方不明のお子さんを捜し続ける2人の父の姿、東電の担当者や責任者の葛藤、伝える側の人…様々な立場の人のその時々の複雑な気持ちなどもありありと伝わってくるくらい、7年間を本当に緻密に取材されています。遠くにいるだけでは想像し切れない現実は日本人が知るべき義務だとすら感じるほど。わが家の次男も当時3歳の倖太郎君と同じくらい。上野さんの気持ち、倖太郎君のことを思うと涙が止まりません。2018/12/27
おかむら
34
津波で家族を亡くした2名の男性(南相馬市と大熊町)の7年間を追ったルポ。福島県の被害はどうしても原発事故がメインになってしまうけど、津波で行方不明になった家族を探すことも立入禁止地区で叶わないという遣る瀬無さ。家族を救えなかった自分への怒り、東電への怒りが時間とともに変化していく様が胸を打つ。東電側(副社長)にも取材。そしてあとがきにビックリ。ああ、副社長ってあの人かー。いやむしろ人間味が増したというか。2018/10/20
かめぴ
15
東京オリンピック…で浮かれている中でも尚元の暮らしに戻れない人がいるのが現実なんだろうなとこの国の弱者に冷たい在り方を噛み締める。地震・津波・原発で未曾有の事態をどう収拾するか、人間性が問われる。重たすぎるが眼を背けてはいけない、と強く思った。子どもがいる身としては本当に辛い。2019/01/20
コロ助☆
9
「捜索をやめたら、そこで可能性はゼロ。やめない限り、見つかる可能性はゼロじゃない」 絶対に我が子を見つけてあげたいという親心、執念。 「東電という会社や組織への怒りが変わることは、ない。だがその中にも、心を持った人間はいるのだと気づき始めた。『会社』と『人』とは、別物だ」 福島は原発事故の絡みもあり、退避を余儀なくされた事で、思うように捜索が出来ず、すぐに見つけてあげる事が出来なかったお父さんの気持ちを想うと、その辛さ、悔しさは計り知れない2021/02/24
Mirror
8
震災後を生きる1人1人が日々を精一杯生き、身の周りの人を大切にし感謝を伝えられる自分でありたい。2018/09/18