内容説明
言語的な数々の実験、あくなき芸術性追求、社会的不公正の告発、政治と文学の諸問題、卑小な自らの眼に映る事象の描写、経済成長を背景に叢生した新感覚……と昭和の文学における主潮流は移ろってきた。時代に翻弄される作家たちの姿を身近に見聞きし肌で感じつつ、文壇の主流と距離をおき自らの小説世界を追い求めた野口冨士男がその晩年身を削り書き継いだ、文字通り切れば血の出る生々しい文学史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
70
古本まつりで購入。文士、また編集者としてさまざまな作家と交流があった著者。その視点から語る昭和文学史。戦前から戦後まで生き抜いてこられたので、凄く説得力がある密度の濃い文章。エッセイが混じるがそこに登場するかたがたも文学史に名を遺すような作家、今では読まれなくなってしまった作家、それぞれに活き活きと描写されていて、貴重な文献である。著者のことを存じ上げなかったので、入手できる限りは読んでみようと思う。とてもクレバーな印象を受けた。2018/10/28
yoyogi kazuo
1
「感触的」というだけあって、自らが当事者として関わった戦時下の文学運動について、自分が書き残さなければ歴史の中に埋もれてしまう、という使命感をもって書かれていることが伝わってくる。文学者ならではの表現に唸らされる箇所も多い。当然ではあるが平野謙についての言及が多い。野口がこの本を書いた時点で平野は既に亡くなっているが、平野とは個人的にも色々と関係があったようだ。国家(軍部)による言論統制が強まった昭和15年頃からの戦時下の文壇情勢についての記述が最も詳細で迫力がある。2022/01/27
rbyawa
1
k004、紀伊国屋『行動』の編集者になった辺り、戦後の「無頼派」に関しての辺り、それと…うーん、文芸復興期は多少読めたものの基本的に「純文学から外れることによって人間は苦痛を覚える」という指針で全てが語られていてところどころぞくぞくした、有名な資料本が多いので結構読んでいたけどちょくちょく趣旨が違う気が…。それと大正文学研究会ってのが素人だけを集めた集団だったというのを懇切丁寧に解説してくれてありがとう…おかしな内容だと思ってたんだ…。まあでも全体的には「純文学を至上とする見慣れた改竄文学史」だったかな。2020/01/02
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