内容説明
極楽と地獄の観念はなにに根ざすのか。平安時代中期の僧・源信(942-1017)が極楽往生にまつわる重要な要素を集成した『往生要集』は、「極楽」と「地獄」の概念を明示し日本浄土教の基礎を築いた日本仏教史上最重要の仏教書である。川崎庸之、秋山虔、土田直鎮の三碩学が平易な現代語訳として甦らせた本格的決定版の文庫化。(原本:『日本の名著 第4巻 源信』中央公論社刊、1972年所収『往生要集』)
目次
凡例
序
大文第一 厭離穢土
大文第二 欣求浄土
大文第三 極楽の証拠
大文第四 正修念仏
大文第五 助念の方法
大文第六 別時念仏
大文第七 念仏の利益
大文第八 念仏の証拠
大文第九 往生の諸行
大文第十 問答料簡
末文
源信の生涯と思想
補注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ホシ
21
この国で現代語訳が読めるとは!後世に多大な影響を及ぼし、中国でも尊崇を集めた『往生要集』。有名な地獄の描写は現代人が読んでも眉を顰めたくなるシロモノ…。「なんて無慈悲なんだ!」と獄卒を罵る地獄の亡者に対して、獄卒は次の偈文を詠むそうです。「汝は愛欲のわなに誑られ/悪不善の業をば作せり/いま悪業の報いをば受く/なにゆえぞ我を瞋り恨むや」「汝はもと悪業を作し/欲痴のために誑かさる/かの時になんぞ悔いざる/いまに悔ゆとも何かはせん」2019/03/30
アル
3
天台宗の内にあった浄土信仰を丁寧に解説した書。 ほとんどの記述に出典や論拠の名を記し、略述した箇所や引用範囲を明記しているのは著者・源信の学者的な資質が強く伺えるように思う。 想定問答部分の自論に対する難癖の付け方と回答、なるほど若年で議論を得意としたのを伺わせる。 念仏の信仰や作法、心構えや特別な時の手順などが丁寧に書かれており、かなり実践的な内容に感じた。 阿弥陀仏への信仰ぶりを見ると、後に法然らが天台から出て浄土宗を開いたのもわかる気がする。2018/11/30
maqiso
2
念仏によって往生するために、地獄と極楽の様子や念仏の利益や方法を、多くの経典を参照しながら詳細に解説している。重複も多くて読み通しにくいが、往生の意味とそれを可能にする理論と実践方法がすべて書かれていて良い。地獄の責め苦や仏の功徳がインフレしていっているのが面白い。2019/09/03
Koushi Kawasoe
2
天才学僧源信による、浄土勧進のための書。読む前は地獄のイメージを当世の人々にもたらしたものと考えていたが、「厭離穢土」だけでなく念仏の方法、理論、証明、多方面から、「欣求浄土」のための考察がなされていた。ただ、本来「観仏」をもって至上とし、観無量寿経を引きながら、その方法を提示したため、「称名」は劣ったものだとの解釈が多くなされているわりには、善導大師をはじめ、各種先達の「称名」についての釈も披見されており、イメージと違った。(もしくは私の理解不足なのかもしれないが)2019/01/02
K
0
地獄絵の起源として読み始めたが、それは全十章の中でも第一章の前半だけで、主題は極楽浄土のための念仏の大切さである。念仏の実践方法や得られるご利益に関して主にQ&A形式で整理し、様々な経典を引用しながら回答することで解説していく。序章から一貫して、念仏=苦しい修行を出来るだけ楽に、身分の貴賤なく乗り越える助けとして優れている、と述べているのが印象的で、庶民にこれほど広まったのが頷ける。念仏するだけで罪人も浄土に行ける理由は苦し紛れっぽく思えたが、悔ゆる心さえあればOKというのはそれこそ救いようだと思う。2025/01/02
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