内容説明
日本の「象徴天皇制」をはじめ世界43ヵ国で採用されている君主制。もはや「時代遅れ」とみなされたこともあった「非合理な制度」が、今なぜ見直されているのか? 各国の立憲君主制の歴史から、君主制が民主主義の欠点を補完するメカニズムを解き明かし、日本の天皇制が「国民統合の象徴」であり続けるための条件を問う。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
32
各国の王政の根強さの理由が理解出来る内容でした。廃止論者のコービンも労働党の公約には掲げないのだから。でも、/一定の家族が、他のすべての家族よりも、国内において擢んでているとき、究めがたい神の摂理がある/その点で、二〇〇〇年以上にわたって日本で「擢んでて」きた天皇家の正統性は戦後にも変わりがない。/誰を起点としているのか不明でした。/自らの責任について文学方面と曖昧にしたまま亡くなった昭和天皇と反ファッショの戦いに関わったヨーロッパ王室を同列に語る事は出来ないのでは。2019/02/20
鐵太郎
30
冒頭、かのH・G・ウェルズによる「馬鹿げた君主制など百害あって一利なし」という趣旨の激烈な文章から始まります。第一次世界大戦のさなか、英国が死にもの狂いで戦っていた頃の文章。しかしそれから100年たって、英国はいまだに君主制を維持して一流国の中に伍しています。そして2017年時点で国連加盟国の五分の一がいまだに君主制を維持しています。この本はそれを踏まえ、共和制と君主制、民主制と独裁制などさまざまな角度から君主制を取り上げ、未来はどうあるべきなのかを論じたもの。一見の価値がある論ではないかな、これ。2021/01/18
南北
21
英国の近代政治史が専門の著者が英国の立憲君主制の歴史と現在のヨーロッパやアジア各国の君主制について論じています。ヨーロッパだけでなくアジアでも日本を初めとして立憲君主制となっている一方、絶対君主制の国々も残っている理由は興味深く感じました。ただし絶対君主制の国々は国民の支持が低下すればいつまでも安泰ではいられません。最後に日本は象徴天皇制を維持できるかを論じています。世界最古の歴史を持つ皇室はその制度を維持するためにさまざまな工夫をしてきましたし、今後も先例を守りながらどうするか考えていく必要があります。2019/04/08
ピオリーヌ
16
特に北欧の王室、ベネルクスの王室、アジアの君主制についての記述が面白かった。概ね日本の象徴天皇制より大権が強いイメージ。第二次世界大戦時の(主に)ナチスドイツに対する対応でも各国に特色が見られ大変興味深い。2023/10/17
さとうしん
16
前半でイギリスの立憲君主制の成立史を、後半で各国の君主制の様相を解説。特に後半部を面白く読んだ。ナチスへの抵抗の象徴となったノルウェーのホーコン7世と、ナチスに降伏したことで大戦後に国王に復帰できなかったベルギーのレオポルド3世など、各国の君主制あるいは君主個人への毀誉褒貶を見ていると、継承の安定とともに、危機に際して国民が納得する形で良識を示し続けることができるかどうかが日本の象徴天皇の生き残りの鍵ではないかと思った。2019/03/03