内容説明
ここは杉並の古びた洋館。父の行方を知らない刺繍作家の佐知と気ままな母・鶴代、佐知の友人の雪乃(毒舌)と多恵美(ダメ男に甘い)の四人が暮らす。ストーカー男の闖入に謎の老人・山田も馳せ参じ、今日も笑いと珍事に事欠かない牧田家。ゆるやかに流れる日々が、心に巣くった孤独をほぐす同居物語。織田作之助賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
499
イケメン内装業者と佐知とのドキドキハラハラな出会い、多恵美の元彼のストーカー事件、そして雪乃による『開かずの間』突入など、ちょっとした出来事が三浦さん一流の味付けでドラマティックな物語へと昇華して楽しませてくれました。超一流な構成の妙が安定した土台を築くこの作品。超一流なキャラクター設定が人の生命力の強さを感じさせるこの作品。そして、超一流な三浦さんのエッセイのかっ飛んだ世界観が全体を包み込むこの作品。三浦さんのファンで良かった!つくづくそう感じさせてくれた小説とエッセイが融合した夢の先にある作品でした。2021/08/21
bunmei
458
はっきりとした起承転結もなく、物語のピークもないのですが、女4人の共同生活による日常を、しをんさんならではの女性の視点で切り取った、ほのぼのとした物語。母・鶴代と刺繍作家の娘・佐知が住む古い洋館に転がり込んで生活するようになった多恵美と雪乃。心に孤独と過去を引きずりながらも、この洋館での暮らしに馴染んでいく中でお互いの心を解きほぐしていきます。アラフォーの佐知の心のつぶやきを通して、著者の思いも語られているのでしょう。但し、後半はいつものしをん作品とは一味違うファンタジーの世界が展開します。2018/08/28
Yunemo
397
表題からは何の話かな、という素朴な疑問のままに中身に突入。あの家に何らかの意味があるのかなとも。日常の淡々とした生活を、またいわゆる日常の中の珍事を、4人の女の生き方を、静かなタッチで表現されてますね。解説で説明されてるように谷崎の没後50年にあたって、谷崎作品・細雪にちなんだ書下ろし作品が本作。4人のそれぞれの性格で、今の女をデフォルメしているような感覚にも捉われます。ある部分ファンタジックで、カラス、父親の霊、河童のミイラとそれぞれに語り部としての登場。外から見る眼ってこんな感じなんだという新鮮さも。2018/07/29
hitomi.s
350
人が四人集まって暮らす。母娘と友人ふたり。 …弟と友人たちとで暮らしていた時期が私にはあったなと思い出した。色恋とかでなく。楽しかったし心強かった。けど、なんかどこかでこれはいっときのことだと思ってた部分もあって、楽しいのも心強いのも不安だったな。楽しければ楽しいほど、ほんの少しだけ大げさに笑ったりしてさ。 不安だったのではなくて、哀しいとか寂しいに似てるかな。それでもずっと続くのではないってわかってるから、やっぱり大切だった。 ドラマ、やるのかな。かしましく、楽しいドラマになるといい。2019/03/10
あきぽん
345
私自身、現在オンナだけで快適に暮らしているのでこの楽でゆるい感じ、ものすごく共感しました。未婚率が上がっているのは男性の非正規雇用の増加や見合い結婚の消滅、というのもあるけど、男も女も、結婚しなくても生きていける(あるいはその方が生きやすい)人が増えているからというのがホントのところではないでしょうか?メディアはそんなことは決して言いませんが。好きな異性と一緒になるのも素敵な人生、でも、そうならなくても他にいいことがあります。生産性はありませんが笑。2018/09/06