新潮文庫<br> 砂浜に坐り込んだ船(新潮文庫)

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新潮文庫
砂浜に坐り込んだ船(新潮文庫)

  • 著者名:池澤夏樹【著】
  • 価格 ¥539(本体¥490)
  • 新潮社(2018/07発売)
  • ポイント 4pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101318233

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内容説明

石狩湾で坐礁した、五千トンの貨物船。忽然と砂浜に現れた非日常的な巨体に魅せられ、夜、独り大型テレビでその姿を眺めていると、「彼」の声がした。友情と鎮魂を描く表題作と、県外の避難先から消えた被災者の静かな怒りを見つめる「苦麻の村」、津波がさらった形見の品を想像力のなかに探る「美しい祖母の聖書」ほか、悲しみを乗り越える人々を時に温かく時にマジカルに包み込む全9編。(解説・堀江敏幸)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

眠る山猫屋

42
静謐。喪失に満ちた短編集。座礁船を見に行った主人公が、今は亡き友人との邂逅を果たし、二人の関係性を見詰め直す表題作。ささやかな事象を改変することにより、未来の災害を避ける少年たちの本能。311の天変地異を経て、なお生きていく人々と喪われた人々の想い。一番印象的だったのは、喪われた姪と再会を果たす主人公の幻想的な旅路を描いた『上と下に腕を伸ばして鉛直に連なった猿たち』かな。前向きではないが、振り向くことのない物語群。静謐。2018/10/11

ちえ

38
不思議な透明感がある。どれも生と死、悲しみや悼む気持ちを扱い、柔らかに包み込む9つの短編。私たちは文明や科学に慣れて「わかる」事しか見ないようになっているけれど、実際は悲しみや想いに呼応して死者がそっと隣に座ったり、私たちの行動には彼らの想いがどこかで働きかけているのかも…。作者の本は初読だと思っていたけれど、文庫版初収録の「美しい祖母の聖書」は以前読んだ『それでも三月は、また』の中でも心に残っていた。解説は堀江敏幸さん。2019/06/30

Tadashi Tanohata

37
摩訶不思議な、「現世」と「来世」を繋ぐ9編のオムニバス。むこうに渡る瞬間であったり、あちらから友人がやって来り、コールがあったり。後ろに誰かの気配を感じながらも、ゾワッとするわけではなく、どこか懐かしく、どこか落ち着く。親父を見送ったあの時間が蘇る。2019/08/30

エドワード

33
砂浜に坐り込んだ船。これは絵になる。表紙の絵だ。見に行きたくなる。すると声がする。本文中にもあるが、これは能だ。亡き友との対話。猿たちの話も亡き姪との対話だ。私の実家にこの猿が十匹繋がっているのがあり、どこか可笑しい、東西不思議物語という印象。「夢の中の夢の中の、」は、まず聊斎志異が頭に浮かんだ。まあ今昔物語なんだけど。震災で被災した人々を描く「美しい祖母の聖書」「苦麻の村」。「イスファハーンの魔神」のお父さんがうらやましいね。私もジニーと一緒に旅してみたい。もちろんイスファハーンへも。世界の半分。2018/06/22

みっちゃんondrums

28
ああ、すべてが珠玉と言っても良い。死者と生者、去る人と去られた人のあわいの、悲しく温かく時に可笑しく、夢のような(まさに夢の話もある)話たち。震災でも、その後各地で起こった自然災害でも、当事者にならなかったのは、ただ運が良かっただけ。被災者の人数ではない。一人一人が生きていたし、生きていかなくてはならない。この作品を読むことで、傍観者でしかない自分の言い訳にしている。『美しい祖母の聖書』『苦麻の村』は胸に迫る。そして、「私を昔のイスファハーンにつれてってくれ!」いい話だった。2018/07/17

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