内容説明
被爆しながらも、孫に決して多くは語ろうとしなかった祖母。戦後72年を経て、被爆者の平均年齢は80歳を超え、当時の出来事を詳細に語れる人が徐々に少なくなっていく現実に危機感を覚えた著者は、自らが経営するバーで、毎月6日、「被爆体験者の証言の会」を開くことを決意する……。本書の刊行を目前に、肺がんにより37歳で亡くなった著者が、その生涯を通じて持ち続けた平和への覚悟と志とは……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
チェアー
21
被爆された方の証言は同じものは一つとしてない。一人一人の人生で同じものがないのと同じだ。だけど、「被爆者の証言はもう何回も聞いた」と思う心はないか。被害を数字に置き換えていないか、と反省する。文中にも出てくることだが、平和とは他人の心や痛みを想像し、思いやることから始まる。対抗や復讐からは平和は生まれない。そのことを被爆された方が言っているのに、なぜ被爆していない、戦争を知らない人が、対抗と復讐を声高に叫ぶのか。筆者の死をいたずらに嘆くよりも、筆者の思いを自分なりに咀嚼して前に進むことで、遺志に応えたい。2017/09/15
Nobuko Hashimoto
13
この数年ヨーロッパの負の遺産を訪ねるようになって、広島に行ったことがないことが気になり出した。そこで同僚や学生とスタディツアーを計画、少しずつ関連本を読んでいる。戦後70年以上経ち、被爆体験者が高齢化し、亡くなられたり話せなくなったり記憶があいまいになったりされている。経営するバーで語り部の話を聞く会を10年以上続けた著者が、語りを直接聴くインパクトの強さを感じるとともに、記憶を記録に残しておくことも大事であると記しているところが印象に残った。著者自身も病気で若くして亡くなる直前まで本書を執筆された。2018/09/13
マイケル
7
奇跡的に生き延びた被爆者たちが思い出したくない悲惨な経験。核兵器の本当の恐ろしさを伝えることが出来るのはやはり実際にその場に居た人。語り部の会で貴重な証言を聞いてもらう活動を紹介。記録に残すことが重要。建物疎開が若者の被害を拡大した愚策。本書内で何度も言及される谷本清氏の活動については「ヒロシマ(ジョン・ハーシー)」に詳しい。核兵器禁止条約が2021年1月22日に発効。タバコを吸わない元高校球児だった著者が37歳で末期肺がんになり本書発行直前に死亡。職場(バー)での受動喫煙なのか被爆3世の遺伝子も関係?2020/11/03
Humbaba
5
記録が残っていたとしても、それを語る人がいなくなってしまえば風化してしまう。また、残る情報はどうしてもその時代の空気というものを反映しにくい。個人の経験は客観性はないかもしれないが、その場にいて実際に体験したからこそ伝えられるものというのも存在している。2017/10/14
みぃた
2
是非若い世代に読んでもらいたい。 平和学習をしてきても知らないことはたくさんあるので、被爆者に実際に話を聞ける間に接点を持ってちゃんと知っておくべきだと思う。 著者のような考えの人が増えて、後世に伝え遺していけたらいいな。2018/02/23