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内容説明
海外の研究者が「世界初の先物取引市場」と評価する江戸時代、大坂堂島の米市場。米を証券化した「米切手」が、現在の証券市場と同じように、「米切手」の先物取引という、まったくヴァーチャルな売り買いとして、まさに生き馬の目を抜くかのごとき大坂商人たちの手で行われていた。このしばしば暴走を繰り返すマーケットに江戸幕府はいかに対処したのか? 大坂堂島を舞台にした江戸時代の「資本主義」の実体を初めて本格的に活写
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
66
あけましておめでとうございます。今年も相場のお勉強です。経済史の本ってロマンがあると思っているのですが、現代の市場のことを多少勉強していたので理解しやすかったかも。米切手の信用を高めるための幕府の政策や旗振り通信など、想像力を刺激されますね。今年は日本経済史も追っかけてみたいと思います。2021/01/01
ひろし
52
江戸時代の大坂は天下の台所として有名だが、米の先物市場が成立しているなど最先端を行っていた。そこで江戸幕府が腐心していたのが、先物を認めることで取引性を向上させ米価の高値安定を図ることと、米価に代表される物価の安定を図ることであり、これらは現代においても何も変わっていない。実証的な文章は読みやすく論旨も明快で分かりやすい。2018/08/20
うえぽん
49
経済史学者が堂島米市場の取引や、幕府による市場規制の成否等を解説。米切手売買(正米商い)と先物取引(帳合米商い)が存在し、各藩は幕府通貨を獲るために市場での米販売を重視。取引終了前の火縄の点火・消火間に約定がない場合にその日の取引を無効にする立用は、急激な価格変動や価格操作を防止するためという。現物米の裏付けがない空米切手の禁止や公金投入のコミット、米価低落に対する買米の発令と災害発生後の解除等の政府・市場間の駆け引きは、現代にも通じる。相場を伝達する米飛脚の活躍と、禁止された旗振り通信の存在も興味深い。2025/06/21
akira
39
まちライブラリー府立大本。 先日の街歩きイベントで大同生命へ見学に行った時に見かけた一冊。非常に興味深い一冊だった。江戸時代の大坂を中心に広がった米切手による市場取引は市場経済を学ぶ上でもわかりやすい。 なぜ時の権力は市場への介入に慎重なのか?読んでみると本当に様々な要因が重なっていて容易ではないことがわかる。江戸時代でさえ市場のコントロールは困難だったことをみると、現代もまた然りだなと。あっちが立つとこっちが立たないとはこのこと。 「宝暦の御用金政策」2019/11/24
樋口佳之
35
一方で、明治日本がアジアでは突出した速度で工業化を遂げた背景に、江戸時代において培った経験が全くなかったとも考えがたい。/江戸時代の金融市場において培われた経験が、明治期の工業化といかに関わるのか。筆者は今後もこの問いに向き合って研究を続けていきたいと思っている/米飛脚は例外とされた。理由は速度/奈良の商人から政府に出された陳情によれば、大阪で発送した次の日にしか奈良に届かない郵便制度では、商業上の妨げになると言うのである。大阪で出された郵便が、翌日に奈良に届くとすれば、現代の郵便と何ら変わりはないが2018/09/09




