内容説明
18、19世紀のロンドンは、「世界経済のメトロポリス」であると同時に巨大なスラムが存在する「世界の吹溜り」でもあった。また、カフェやレストラン、劇場といった華やかな文化を生み出したパリの都市空間は、二月革命に代表される民衆騒乱の舞台にもなった。人はなぜ都市に集まり、どのように大都会の生活様式が生まれたのか、この根本的な問いをめぐって、イギリス近世・近代史、フランス社会運動史をそれぞれ専門とする碩学が重層的な連関のなかに考察する。ふたつのアプローチ、すなわち経済生活と民衆運動、その違いがそのまま「二都」の性格の反映となっていることもきわめて興味深い。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
塩崎ツトム
11
ロンドンが消費の中心とすれば、パリは政争の中心というべきか。だからもしナチスが欧州を支配したとしてもパリはその都市そのものが巨大野党として残るわけで、ヒトラーがパリの破壊に執着したのも当然と言えば当然。(ヒトラーがそこまで考えていたとは思えないが)2022/06/26
ラウリスタ~
11
川上氏のロンドン編が圧倒的に面白い。産業革命ー工業化ーロンドンにスラム街誕生という一般的な見方は間違っている。工業化で、むしろ首都から工業は脱出した。そこに残ったのは仕立て業(妻)と港湾労働(夫)。人口の過剰な英国ではなく、アメリカで労働節約型技術革新(ミシン)が行われ、国力の逆転へつながる。仕立て業は技術職から、下請け、孫請けの分業化された低賃金労働へ、服の値段が下落する。喜安氏のパリ編は、民衆蜂起のメカニズムを、19世紀前半パリに注目して読み解く。盛り場としてのブールヴァールが騒乱の舞台となる。2019/02/01
拡がる読書会@大阪
1
18世紀後半から19世紀にかけてのロンドンとパリという二つの大都市の発展と変容を社会史的観点から描いた歴史研究書です。 都市計画、住宅問題、衛生状態、労働環境、階級形成、移民・人口動態など、多面的な視点から都市の変容を捉えています。ロンドンが資本主義の最前線に躍り出て「商業の都市」。パリは政権による都市改造で、街並みが一新されたことなど「政治と文化の都市」として発展していった事が記されています。 https://note.com/sharebookworld/n/necc4a341560d2025/03/09
影実
1
大都会の都市文化、生活様式について18、19世紀のロンドンにおける文化の発信や労働環境とスラムの形成、パリにおける盛り場の形成と民衆騒乱を通じて描写した一冊。前編のロンドンについてを川北稔氏、パリについてを喜安朗氏が記載している。特にロンドンにおける港湾労働者や衣料品加工業の働き方に関する記述が非常に面白かった。逆にパリについては文章が冗長かつ内容が細かすぎてイマイチだった。ロンドンとパリについて、テーマにあまり連続性が無く一冊にまとめて発刊する意味も薄かったように思えるのも残念。2022/10/09
つまみ食い
1
資本が資本を呼び人が人を呼んで膨れ上がる大都会。川北稔(敬称略)はロンドンの労働者街形成の過程に焦点を当て、喜安朗はパリの労働者の住う場としての性質が民衆文化とあいまりどのような騒乱を引き起こしたかということに焦点を当て描出している。2020/10/03
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