内容説明
「目標達成」と「働き方改革」の間で翻弄される日本のビジネスパーソンたち。
ブラック企業から人々を救え! 時代が待望した文庫書下ろし小説。
「カトク」とは、ブラック企業が社会問題化する中、大企業の違法な長時間労働を専門に取締る目的で、東京と大阪の労働局に作られた「過重労働撲滅特別対策班」の略称。
主人公は、カトクの最年少監督官・城木忠司。
ある過去の出来事がきっかけで、民間から労働基準監督官に転身した彼は、女性上司の村井真理班長の指導の下、今日もこの国の第一線で働く人々の苛酷な現実に誠実に向き合い、悩みながら奮闘します!
筆者は『狭小邸宅』はじめ、ブラック企業描写に定評のある新庄耕さん。
すべての働く人必読の、文庫書下ろし長篇小説です!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えちぜんや よーた
98
さすが小説にして売るだけあって、労働基準法や労働基準監督官のことをよく調べていると思う。彼らは「監督官」と言っても全国に3,000人程度しかいなくてベンガルトラ並みの希少職種である(ちなみに労働基準法の適用事業所は約300万程度)。彼らは司法警察員であり、同じ厚生労働省の麻薬取締官や警察庁の警察官と官職が同じ。労働基準監督官・麻薬取締官・警察官はすべて腰縄と手錠を携帯できる(ただし監督官の拳銃携帯は不可)。社会保障オタクの血が騒ぐ一冊だった。2018/07/26
ma-bo
84
過重労働撲滅特別対策班、通称カトクに籍をおく最少年監察官の主人公が社員・管理職・代表者と対峙し、違法な過重労働と向かい合う物語。働き方改革を進めている今タイムリーな内容だった。企業側(管理職も含めて)の言い分もわかる部分もあり(だからといって許されるわけではないが)。正義だけでは測れない問題で難しく、カトクがバッサリ解決という様な内容にならないのは納得かな。2020/02/26
いたろう
60
過重労働撲滅特別対策班、通称カトク。大企業の違法な長時間労働の問題に特化するため、労働基準監督署とは別に、労働基準監督官を配して設置された厚生労働省の特捜部隊。カトクに勤務する、労働基準監督官を主人公にしつつ、長時間労働を強いられながら感覚が麻痺している社員、社員に長時間労働を強いながら自らも猛烈に働いている(働いてきた)経営者、それぞれの視点から描かれることで、問題のいろいろな側面が見えてくる。そして、長時間労働の調査をしているカトク自身が、膨大な仕事を抱え、長時間労働をしているというのは、何とも皮肉。2024/04/29
Yunemo
45
カトクですか。労働基準監督官は知ってましたが、こんなポジションがあること初めて。働き方改革法が成立した今、過去の慣行、或いは自主的残業までもが36協定を超えれば完全な法律違反。賃金不払い、過重労働、同一労働同一賃金等労働問題に関する部分は表だって議論されてこなかった部分でしょう。難しいのはお上からの法規制が、現場で理解されそれに伴う変化が必要な点。それぞれ背負ってきたものが違う中で一色端にされてもいいのという素朴な疑問も。逆に意欲が阻害される点も否めず。でも時代の流れの評価を自身でどう評価すべきなのかな。2018/08/12
かおり
44
電通のまつりさんを思い出してしまいました。「わたし、定時で帰ります」を読んだ時に偉そうな事を書いていたけど、それは···多少の嫌がらせがあるものの、ここ数年は自分の裁量で概ね自由に出来る課(係)だったからで、この本に出てくるブラック企業に社員としていたら負けたくなくて死ぬまでやってしまいそうな気がしてしまいました😖2019/02/11