内容説明
中村由一さんは長崎市内の被差別部落の出身です。被爆者であり被差別部落出身者でもあることで、つらい少年時代を過ごしました。「ゲンバク」と呼ばれた少年が大人になり、その体験を伝えることで差別のない世の中が実現することを願って、この本を書く決意をしました。目次より――ピカドン/消えたふるさと/「ハゲ」「カッパ」「ゲンバク」とよばれて/「被差別部落」を知っていますか/春いつの日
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
73
被災地が限られていたために、同じ長崎に住んでいながらも被爆者だと差別を受けた少年の話。被爆者、部落差別、様々な差別があるが、生徒を教える立場にある先生のあまりの差別意識に唖然とした。本当に、人の言葉はときに戦争よりも残酷だ。だからこそ、語り続けようとする中村氏の勇気と強さに胸が熱くなる。2019/07/07
☆よいこ
57
小中学生むけノンフィクションシリーズ「世の中への扉」2歳で長崎県浦上で原爆にあった中村由一さんの半生。小学校で「ゲンバク」とあだ名をつけられいじめられ、卒業証書を破かれた話は胸が苦しくなるようだった。卒業し、就職しようとすると今度は被差別部落を理由に差別を受けた。「この世から差別やいじめをなくすために、いじめを受けたときのぼくの気持ちをしっかり語っていこうと、心に決めました」▽キレイゴトかもしれないが「世の中から戦争や差別やいじめをなくすことはできる」と信じて、子とも達に語りかけることの大切さを感じた。2018/10/14
あじ
45
中村由一(よしかず)さんが長崎で被爆したのは3才の頃。教師や子供らに「ゲンバク」と呼ばれ、理不尽ないじめに遭いました。受難はそれだけで終わりませんでした。被差別部落の生まれであることから、就職差別を受けるのです。現在でも福島からの転校生と知るやいなや“原発いじめ”が始まると言います。私は思うのです、大人の無知が子供に伝播すると。大人は言動に責任を持たなくてはなりません。中村さんは人生を怖れず切り拓いて行きます。素晴らしき児童書でした。 【3,4年生から】2018/08/22
たまきら
36
「私には誕生日が二つあります」という著者。長崎で幼いころ被曝し赤ちゃん返りしてしまった彼にとって、8月9日が二つ目の誕生日なのだと…。戦争で家族を失うだけでなく、学校での凄惨ないじめ(教師のいじめにはただただ怒りを覚えました)、貧困ー美輪明宏さんの「ヨイトマケの唄」そのままのお母さんの姿。被差別部落出身であるせいで夢の職を得る機会を絶たれる。…壮絶な彼の人生に絶句しつつ、日本がまたこういう人を生む道へ進もうとしていることに怒りを覚えます。人はなぜ学習しないのだろう…。2025/03/24
マツユキ
26
長崎で2歳で被爆した中村由一さんのノンフィクション。被爆した事だけで過酷なのに、差別を受け、学校では行事も一緒になってのイジメに合う中村さん。就職でも、また差別が。それでも生きて、語ってくれた中村さん、簡単に強いとは言えないんですが、中村さんの言葉を大事にしていきたいです。2022/08/06