内容説明
西洋中世における最大の神学者であり哲学者でもあるトマス・アクィナス(1225頃―1274).難解なイメージに尻込みすることなく『神学大全』に触れてみれば,我々の心に訴えかけてくる魅力的な言葉が詰まっていることに気づく.生き生きとしたトマス哲学の根本精神を,理性と神秘の独特な相互関係に着目して読み解く.
目次
目 次
序
第一章 トマス・アクィナスの根本精神
一 トマスの「新しさ」
二 キリスト教とアリストテレスの統合
三 「饒舌」と「沈黙」
四 神秘と理性
第二章 「徳」という「力」──「枢要徳」の構造
一 トマス人間論の中心概念としての「徳」
二 「枢要徳」と「神学的徳」
三 「徳」と「善」
四 「節制」と「抑制」──徳の喜び
五 アリストテレスに洗礼を施す──キリスト教的「純潔」
六 親和性による認識──枢要徳と神学的徳を架橋する
第三章 「神学的徳」としての信仰と希望
一 信仰──知性による神的真理の承認
二 恩寵と自由意志の協働
三 神学的徳による人間神化
四 希望──旅する人間の自己超越
第四章 肯定の原理としての愛徳
一 神と人間との友愛としての愛徳
二 「神からのカリタス」と「神へのカリタス」
三 神の愛の分担者となる
第五章 「理性」と「神秘」
一 受肉の神秘
二 「最高善の自己伝達」としての受肉
三 受肉と至福
四 「ふさわしさ」の論理
五 人間理性の自己超越性──「神秘」との対話
あとがき
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
80
パウロ、アウグスティヌスと並び称される理論家であるトマス・アクィナスであるが、「神学大全」をきちんと読みこなせるほどの教養がない私にとっては、この巨人の全貌をこうして概観できることは大変ありがたい。アリストテレスのニコマコス倫理学とキリスト教神学を総合し、「愛」とともに「徳」、「神秘」でなく「理性」、「感情」や「意志」ではなく「知性」によって信仰を深めることができるとするトマスの考え方は、極めて知的であり論理的である。キリスト教に普遍性を与えられたのは、こういう神学の形成ゆえであったのだと実感できる。2018/03/20
Francis
27
私はカトリック信徒なのだが、トマス・アクィナスは難しいという先入観があって敬遠していた。評判が良いので読んでみると、トマスの考えが分かりやすく書かれており、中世哲学やカトリック神学に対する理解も深まったと思う。著者の山本さんは多数の著書のあるトマス・アクィナスの思想をよくぞここまで分かりやすくまとめてくれたと思う。山本さんに感謝。2021/01/29
浅香山三郎
20
難解だつたが、トマス・アクィナスの神学がアリストテレスの哲学のキリスト教的受容にあつたといふことを詳しく解説してをり、面白く読む。もう少しキリスト教神学に親しんでから再読したら、尚更本書の価値が玩味できるやうになるだらう。2020/08/23
フリウリ
18
こういう分け方はよくないのかもしれませんが、神学パートに対する倫理学パートについては、自分に引き寄せて考えられる言葉もあってよかったのですが、神学パートで「主人持ち」の論理が展開されると、無神論者とは触れ合いにくくなるのが実感で、つまり、アリストテレスのほうが断然わかります。思想史のなかでのトマスの立ち位置や特異性についてほとんど触れられていないことは少し残念ですが、トマスの信仰への理屈や論理は丁寧に説明されていると思うので、何か信仰をもつ人にとっては興味深く読めるのでは、と思います。62024/08/26
さえきかずひこ
18
13世紀に遺した巨著『神学大全』で知られる神学者、トマス・アクィナスの優れた入門書。アリストテレス―とくに『ニコマコス倫理学』―から大きな影響を受けつつ、その思想をキリスト教神学にもちこみ、独自の深い洞察を形成していった過程が、溢れんばかりの引用と共に丁寧に解説される。またその倫理学では枢要徳と神学的徳が有機的につながっている点が平易かつ明晰な筆致で綴られる。人と神の緊密な関わり合いのなかで、理性と神秘もまた深く結びつき、己を超えようとし続ける人間理性が神の神秘を探求していくその姿を垣間見ることができる。2019/11/12
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