内容説明
社会学はいったい、どんな学問なのか? 人間や社会をどのように眺めるのか? 近代の反省的な自意識とともに社会学は誕生したという見立てのもと、ウェーバー、デュルケムらの考察や、他の近代社会科学との比較を通して、その根本的な問題意識を探る。ダイナミックに変容する現代社会における、社会学の新たな可能性をも提示する、初学者必読の究極の教科書。
I 社会学の理論はどのようなものか
第1講 理論はなぜ必要か──共通理論なき社会学
第2講 「モデル」とは何か──合理的主体モデルの考察
第3講 方法論的全体主義というアプローチ
第4講 社会学は何を対象にするか──「形式」への着目
II 社会学はいかに成立したのか──近代の自己意識の再検討
第5講 社会学前史(1)──近代社会科学の誕生
第6講 社会学前史(2)──進化論と比較文明史のインパクト
第7講 モダニズムの精神──前衛芸術は何を変えたか
第8講 学問におけるモダニズム
第9講 デュルケムによる近代の反省──意味の喪失への眼差し
第10講 ウェーバーとマルクス主義
III 〈多元化する時代〉と社会学
第11講 危機についての学問
第12講 二〇世紀後半以降の理論社会学──パーソンズ・フーコー・構築主義
最終講 社会学の可能性──格差・差別・ナショナリズム
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りょうみや
21
後に出た続刊の中で本書について「院生向け入門」「再入門」とあちこちからお叱りを受けたとあるように社会学だけでなく思想史も前提知識として必要な内容。社会学史を簡単ながらも要点を抑えて振り返り、経済学や心理学などの境界のわかりにくさも分かるようになる。また名門校高校生が本書を読んで社会学を諦め経済学へ進学したともあるように社会学の足元の危うさ(固有の研究領域や手法があるのかどうか)もしっかりと書かれている。2021/11/08
hurosinki
8
タイトルこそ社会学入門だが、第二部以降は社会学の母体となった近代社会も概説している。曽我先生の『行政学』の読書ガイドで勧められており、氏の言葉を借りると「近代社会とは、伝統の解体と自律した個人による社会の形成というある種のフィクションを構成原理とする社会である。すると、伝統に代わる新しい『枠』としての制度をどのように理解するのか、その中で個人はどのような存在なのかという問題が生まれる。この問いを考えるところから社会学が誕生した」(『行政学』p4)2021/07/13
さとうしん
6
特に理論社会学の入門書ということになると思う。基礎理論・一般理論があるようでないのではないかという問いは、歴史学でもある程度あてはまるように思う。マックス・ウェーバーに関して、「なぜ日本だけが西欧に追いつけたのか?」という問い掛けが、中国などの経済成長により土台ごと無意味化し、「なぜ西欧が最初に近代化できたのか?」という問いをも陳腐化させかねないという指摘が印象的。2017/04/22
yasu7777
5
読書メーターを始めてから900冊目になります。 入門とありますが、今持っている知識を整理して、改めて社会学関係の本も手に取っていこうと思います。巻末の読書案内が良い道標になりそう。2016/02/02
ぽん教授(非実在系)
5
社会学とは何なのかを、自然科学や他の人文社会系学問(特に経済学)と対比する形でその成り立ち、方法論や認識での立場など根本的なところから説明していく。社会学の教科書は経済学と異なり体系化の度合いが弱いため著者の個性によって全く違うものとなりやすいが、その意味では本書は社会学入門という名前の社会(科)学を中心とした学問の見取り図といった様相である。よくぞこういうものを書ききったと思う他ない。読書案内が恐ろしいまでに豊富なところも素晴らしい。2015/08/04