内容説明
世界最大のムスリム人口を抱え、多民族国家でもあるインドネシアには、アラブ系のマイノリティが暮らしている。彼らは20世紀初めにムスリム社会の改革・近代化を目指す運動の中で活躍したが、国民国家が形成されはじめると帰属意識の選択を迫られることになる。アラブ人の教育活動の変遷から、近代インドネシアにおける社会統合とイスラーム運動との関係を、多彩な史料に基づいて明らかにしていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
14
[イスラーム改革主義運動]:近代、西欧諸国と比して後進的となったイスラーム世界の復興を目的に、イスラームと近代文明の調和を掲げて様々な地域で展開した運動。◇本書は、インドネシアのマイノリティであるアラブ人によって設立されたイスラーム改革主義団体の一つ「イルシャード」の活動に焦点を当て、アラブ人コミュニティがホスト社会に統合されて行く過程を描いている。教育活動において徐々に現地志向が強まり、アラビア語教育の重視を止め、ホスト社会でのイスラーム組織である事を強調した点が統合を推進した要素の一つのようだ。2019/04/18
うえ
7
「多くのアラブ人が、もはやアラブ人であることを第一義と見做していない…インドネシアでは、2000年7月に独立後初めて民族別の集計をとった国勢調査が実施され、その中では華人やアラブ人の項目も設けられた。注目すべきなのは、この時にアラブ人と名乗った者の数が僅か八万八六名だったことである。この数字は、想定される実際のアラブ人の人口と比べてあまりに少ない…潜在的にアラブ人と主張し得る者のうちの約三分の二は、自分の民族として、アラブ人以外を名乗ったと推察されるのである」インドネシアの総人口は二億六二七万人とのこと。2020/07/18