創元SF文庫<br> ミレニアム・ピープル

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創元SF文庫
ミレニアム・ピープル

  • ISBN:9784488629175

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内容説明

首謀者不明のうえ犯行声明もなかったヒースロー空港の爆破テロは、精神科医デーヴィッドの前妻ローラの命をやすやすと奪った。その無意味な死に何らかの意味を見出そうと、デーヴィッドは様々な社会運動に潜入してテロの首謀者たちを突き止めようと試みる。やがてテロ組織の一員である謎の女ケイに辿り着くが、その出会いは彼らの指導者である医師グールドが計画した、中産階級の聖地チェルシー・マリーナでの実験の始まりを意味していた。一般市民が無差別的テロ行為を娯楽として消費する近未来を描く、20世紀SF最後の巨人バラードによる黙示録的傑作。/解説=渡邊利道

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

24
渡邊利道氏が解説でアメリカの同時多発テロと本作との影響を指摘しているが、私は如何にもイギリスでなければ生まれなかった小説なのかもしれないなと思った。ミステリとして読めるが、そう読むと手つきが下手に感じられて面白くない。むしろこれでもかと繰り出される「ヴィジョン」を、そのフラットさにたじろぎながら読むこと。それが求められているのではないか? バラードはSFの分野/文脈で読まれるがとんでもない。まさに(例えば通り魔殺人に揺れる日本で読めば)「リアル」を先取りした作家であることが痛感させられるはずだ。村上龍的?2018/06/23

かとめくん

19
自分の理解した範囲で言えば、イギリスの中産階級の人々が感じる閉塞感を打ち破るための手段として無差別な暴力を選択させ、さらに深い混沌へと導こうとする者たちと、無差別テロに巻き込まれながらその考えに囚われていく主人公の話。中産階級者が閉塞感を感じるのはわかるが、じゃあどうしたいのかが伝わってこなかったので、自分的にはあまり共感ポイントが無く入り込みにくい作品だった。一部の首謀者グループに踊らされただけと言えなくもなく、社会の必然から発生した革命とするには無理があるように思える。2019/05/07

イツキ

13
中産階級と呼ばれる貧困ではないが特別裕福でもない人々がこれといった強い信念もなくテロリズムに走りはじめる事が非常に印象的でした。必死になって生きるほど経済的、立場的に追い詰められているわけでもなくかといって悩みもなく生きて行けるほど幸せでもない人々の逃げ場としての無意味な暴力行為は現代の殺人事件にもどこか通じるものがあるような。明確な生きる理由や拠り所がない人間の不安定さをまざまざと見せつけられたように感じました。2018/07/05

kurupira

10
JGバラードの作品を読むといつも息苦しさや蒸し暑さを感じてしまう。それはきっと有り得ないない設定だと理解しつつも、ひょっとしたら起こり得る世界を描いているからか。本作もさらにネットなどで匿名性がみたされれば、中流階級の不満からふとした事をキッカケに実際に起こってしまうのでは?? 日本なら、、猛暑でも働いてる不満とかからも起こるかも、、今朝の山手線の通勤ラッシュで読み終えてから思った。。(各省庁が進めるテレワークウィーク初日なのになんでこんなに電車混んでるんだーー、でも座れたから読み終えれた。)2018/07/23

塩崎ツトム

8
「プレ伊藤計劃」とでもいうべき黙示録的光景。みんながなにをどうすればいいかわからず、ブルジョア階級は下流への転落の予兆に震えている。本書が執筆された際の日本もちょうど格差や中流階級の転落がピックアップされるようになった時代だった。「大英帝国にはなんでもあります。だけど希望だけがないんです」。アメリカ型消費社会への冷徹な視点も切れ味がするどい。2018/10/17

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