内容説明
石井桃子は、「子どもの本」は根源的に「人間の本」であるという信念のもと、子どもと本を結ぶことを生涯の仕事とした。子どもにとってよい本とは?児童図書館の必要性、読み聞かせの秘訣など、幼時のゆたかな読書体験、子どもの本の編集・翻訳・創作、かつら文庫での実践を通して学んだことを、惜しみなく、やさしいことばで伝えてくれる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アルピニア
45
編集者、翻訳家、作家として活躍した石井桃子女史のエッセイ集。児童図書館、児童文学の重要性が熱く述べられている。特に自宅を開放して作った「かつら文庫」での体験を通して得た子供の読書に関する気づきと学びに深く考えさせられた。また、ファンタジーの誕生、民話を語ることの大切さについて述べた部分が心に残った。実際に「かつら文庫」を開いた時の具体的な状況(本の数や机、椅子の数、会員の人数、開室時間、会費など)も記述されていて興味深かった。近いうちに、荻窪にあるかつら文庫に見学に行きたいと思う。→2018/07/14
niisun
19
自らも絵本を創り、また、海外の素晴らしい絵本や児童書を翻訳して日本に紹介した石井桃子さんが、さまざまな新聞や雑誌に寄せたエッセイを集めたもの。主には、自宅の一室で子供のための図書室“かつら文庫”を開設した頃にあたる1950~1960年代頃に書かれた文章ですが、子供にとっての読書の意味や優れた児童書の要諦など、なんら色褪せることのない内容でした。2歳の娘を相手に、毎夜、絵本を読んでいる立場の私には、刺さる言葉が多くありました。改めて、親の先入観なしに、“娘にとっての”良書を揃えていきたいなと思いました。2018/06/06
あ げ こ
16
読む楽しさに満ちている。本に、お話に、物語に、夢中になる事の。読んで、聞いて、考えて、物語を目一杯味わう事の楽しさに、満ち満ちている。何と言う説得力。何と言う安心感。石井桃子の所に行けば。絶対に楽しい。読みたい本が、沢山ある。よいもの、面白いものが、沢山ある。とても信用出来る。その間違いのなさ。石井桃子自身がまず、読む楽しさを知る人であるが故に。幼い頃の喜び…お話を、物語を、聞いて、読んで、泣いたり、驚いたり、笑ったり、目一杯楽しんだ記憶を、疎かにしてしまう事なく覚え続けていた人であるが故に。信用出来る。2018/06/18
うみ
15
石井桃子さんの考え方、文章の雰囲気、やっぱり好きだなぁ。こどもと同じ目線で世界を見ている。だけど、おとなの目線でもこどものことを慈しみ考えられる人だ。もっと関連著作が読みたいなぁ。2018/08/30
かす実
5
あまり本を読む子ではなかった私ですら、石井桃子さんの仕事にはお世話になってきた。こういう人が日本の児童文学の世界にいてくれてよかった、とひしひしと感じる。信頼できる人。子どもに対する敬意があるし、大人の都合で子供を理想化することもなく、ただありのままに目の前の子供に向き合う。ただ場をひらき、手をかけすぎず、観察し、学びとする。豊かな感性と本質的な知性、誠実な態度とあたたかいまなざしを尊敬する。2023/03/26