内容説明
東京帝大講師から新聞記者に転じた夏目漱石。読売との引き抜き合戦で朝日が勝ったのは給料の額だった。40歳、筆一本で立った漱石の言文一致体の近代小説と、正岡子規、上田万年、池辺三山ら漱石を支えた人々、大衆社会の形成とともに成長した朝日新聞のメディアビジネスをビビッドに描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
128
大阪朝日新聞と東京朝日新聞が分かれていた時代、40歳の漱石との交渉に成功したのは東京朝日。2年の留学後に4年奉職したことで義理は果たせた、文学的に生きたいと望んでいた漱石。雑誌『ホトトギス』などに『吾輩は猫である』『坊ちゃん』『草枕』を発表し ていた漱石の読みやすい日本語での小説を連 載として載せたかった朝日新聞社。ちなみに最初に名乗り出たのは読売だった。著者は漱石研究者ではないようだから、漱石好きなら知っている内容もかなりあるが、新聞社側の事情に詳しい。 しかし、漱石への愛が感じられず...2018/08/05
Willie the Wildcat
77
時勢を踏まえた上での「新聞」というメディアの役割と、漱石作品の考察。日々の市民生活の細やかな楽しみ。応える普通文と、その”日次”という継続性。「一段半/一連載」は、朝日新聞時代の漱石作品の理解を深めるのにもれなく一助。氏にまつわる記載内容はほぼ既知だが、氏の”日本語”への貢献に対する著者の視点は、非常に興味深い。加えて、氏が長生きしていれば戦争も回避?!といった件に、著者の熱い思いを感じる。但し、「小説の内容はともかく・・・」はないだろう!?(笑)2018/07/08
佐島楓
57
言語学史および言文一致のくだりが「あっそうだったのか!」となった。長年疑問に思っていたことが氷解した。そのほかにも、明治文学史、新聞の歴史、そして何より漱石の評伝として優れていると思う。読んでいて明治の空気を吸っているようだった。2018/06/16
ホシ
23
漱石が生きた時代は「新聞」というメディアの草創期。そして、日本に「標準語」が定着していこうとする時期でもありました。この時代背景を鑑みながら、漱石の作品が朝日新聞に掲載された事の意義を読み解いていきます。日本語学者ならではの視点からの考察に、他の漱石本とは一味違った新鮮味を感じました。漱石作品を読むと漱石自身も「漢文訓読調」と「言文一致」で揺れていたのだと思われます。その”揺れ”の中で自身の思想を深め、表わそうとした漱石の奮闘ぶりが目に浮かびます。「標準語の揺籃期」を念頭に作品を読み返すのも良いかも。2019/04/04
なななな
10
明治とともに生きた漱石、タイトルから受けるイメージより、漱石の話。よく見たことがある印象の漱石の写真が、喪章をつけており、明治天皇葬儀後の喪失感が顔に出た写真だったとはびっくりでした。2018/08/02
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