内容説明
内乱から十年、ラバルタ国内での魔導士への迫害は増すばかりで、〈鉄の砦〉も未熟な若者を集めなければ成り立たなくなっていた。そんなある日ひとりの魔導士が奇妙なことに気づいた。〈鉄の砦〉に入ってきた人数と在籍している人数が数百人単位で合わないのだ。それだけの魔導士がいったいどこに消えたのか。同じ頃、エルミーヌで魔導士の指導にあたっているレオンの元に、かつての弟弟子グレイが訪ねてきた。そしてその日から、レオンは姿を消してしまう……。謎を解く鍵はレオンの師が研究していた禁術。感動と共感を呼んだシリーズついに完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
くたくた
39
1〜3巻で情勢と個人の内面は深化し、この4巻ではそれらが全て一つの潮流となって、新たな夜明けを迎える。レオンはずいぶん落ち着いて、自分の道を見いだしている・・・と思いきや、やっぱりぐらぐらしていて。今作では、レオンの亡き師であるセレスが残した禁術を巡り、レオンが巻き込まれ、ゼクスが追いかける。レオンは具体的な成果はなにも上げない感じなのに、しっかりと大きな事態を動かしている。歴史が大きく動いて、ひとつの節目を迎える。実際にそこに一つの世界があるかのような濃密な世界観がすごい。書き上げた著者に拍手。2025/01/12
ときわ
19
前巻を読んだ後ほんとにこの次で完結するのかなあと思ったけど、結局歴史は続くということで終わりになった感じ。こんな展開の3か国に奇麗な結末があるはずないし。多くの登場人物が悩みもがきながら前に進む様子は、見ていて苦しいけれど感動もした。ただ私はそもそもこの世界には納得してない。それを受け入れないと話が進まないので丸飲みはしたけど。魔脈を持つ魔導士は血筋とか民族とかに関係なくこの世界中ランダムに産まれる。これはある種の才能で、社会にとってプラス要素を持つものだと思う。(コメントへ)2019/08/16
タッキー
17
感動の最終巻。これで終わらせるのは本当にもったいないくらいの世界観とキャラクターです。どうして人は自分と違うところを見つけて争うのか、違いという個性を大事にしないといけないという強烈なメッセージが、魔導士や師弟関係、友情を通じて伝わってくる話でした。また、全巻それぞれ主役が変わるのも飽きさせなくてすごく良かったです。これだけ広がった世界観なので、是非ぜひ更なる続編を期待したいと思いました。いい小説に出会えて幸せです^_^2019/12/22
山川欣伸(やまかわよしのぶ)
16
魔導士たちの心情や成熟を緻密に描いたファンタジー小説。本書は、シリーズの最終巻で、内乱のラバルタ国で、魔導士たちが迫害や禁術に立ち向かう。この作品は、魔法や冒険を愛する読者はもちろん、人間の心や社会の問題に興味を持つ読者にもおすすめだ。魔導士としての誇りや使命を持つレオンや、仲間との絆を大切にするカレンスなど、魅力的なキャラクターたちが織りなす物語は、読者の心を引きつける。彼らは困難や試練に立ち向かい、成長していく。シリーズの伏線や謎を巧妙に回収し、レオンの運命や世界の真実が明らかになる展開に涙。2023/10/08
りー
15
レオンはどうなっちゃうの!?と、のっけからヒヤヒヤし通しましたが、物語の結末にはとても満足-正に黎明。そして、翻って自分の生きる世界を見てみる・・・ファンタジー、というジャンルの面白さはそれができることにあると思います。魔導士達の立場や禁術の存在は、二次大戦中のユダヤ人、核兵器の開発やイスラエル建国を思い出さずにはいられません。物語よりもはるかにグロテスクで、怨嗟の螺旋は今も繋がり解決の糸口さえ見つからない。でも、理解しようとすることが第一歩なのだ、と、この物語に励まされた気がします。世界は美しいのだと。2018/10/05




