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内容説明
祖国融和のため立ち上がった男の闘いの記録。
《オシムについてはもう書籍にする気持ちはなかった。
しかし。彼が身を挺して守った祖国がワールドカップに出場しようとしている。(中略)オシムはベンチに入っての現場指揮こそ執っていないが、人生をまだ休んではいない。帰国後も現役として毅然とサッカーの敵と戦い、祖国をサポートしている。》(プロローグより)
ユーゴスラビア紛争終結後20年近く経つ今も、民族対立が続くボスニア・ヘルツェゴビナ。サッカー協会内ではその対立故にFIFAの原則に反し、加盟資格を取り消され、W杯出場が危ぶまれていた。かつて旧ユーゴの最後の代表監督として祖国崩壊に抵抗しようとしたイビツァ・オシムは、日本からの帰国後、脳梗塞の後遺症が残る体を引きずり、W杯出場と人々の融和のために闘っていた――。
病に倒れ日本中から惜しまれながら代表監督を退いたオシム。その帰国後の知られざる闘いと、サッカーを通し憎しみを乗り越えようとする人々の姿を追った感動の記録、待望の文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こも 旧柏バカ一代
27
民族、宗教でバラバラになった国をサッカー代表だけは別の物とさせたオシムの功績。サッカーに政治、宗教を入れない事は当たり前のようでいて難しい。 でも、オシムはそれを実現した。本当に素晴らしい人がジェフに居たんだな。。ジェフに。あのジェフに。2020/09/07
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21
「ある日突然、隣人に銃口を向けられる」という悲惨な歴史。そして、「乗り越えた」などと美談にしてしまえば、戦争が必要なものになってしまう。オシムさんはサッカーという「幸せな戦い」の為に、ただ歩き、語り続けた▼残念ながらロシアW杯は逃したが、ジェコ、ミシモビッチ、イビシェビッチらボスニア代表の誠実な人となりを知り、ますます彼らのファンになった▼本書はコソボ紛争もカバーしている。折しも、ロシアW杯ではスイス代表選手の「国旗ポーズ」が物議を醸し、タイムリーであった。2018/07/01
ぺぱごじら
15
どんだけオシムに傾倒しているのかこの筆者は、と感じながらも、オシムの尊敬に値する信念と行動の一致に、そりゃ仕方ないわなと感じる。「さよなら妖精」のことが頭から離れず、読了後には必ず手が伸びてしまう。バランサーというのは、生半可では日和見主義に陥りがちだが、これだけの新年の強さがあってこそ、バランサーになれるのだと感じる。ハリルホジッチにもこの「強さ」はあった。もし、は不毛だが、オシムがあのまま監督を続けていたら、ハリルと同じことになっていたかもしれない。その時日本はオシムを切れただろうか。2018-1022018/08/20
nishiyan
10
木村元彦氏のユーゴサッカー三部作『誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡』『悪者検算 ユーゴスラビアサッカー戦記』『オシムの言葉』の完結編というべき作品。文庫化にあたって最終章として「2018年ロシアW杯に向けて」が追加されている。本作はブラジルW杯出場までのボスニア代表の置かれていた状況やオシムの果たした役割が関係者へのインタビューを交えつつ、描き出している。内戦終結後も燻り続ける分裂の危機。サッカーを通して学べるところは大変貴重である。良書。2018/06/28
圓(まどか)🐦@多忙のためほぼ休止中
8
2014年ブラジルW杯ボスニア初出場時を中心にするノンフィクション。まずボスニア一国のみの面積と人口に対し複数の民族・言語・宗教の混在する複雑さ、そして内戦の影響により海外に離散した人々の描写に現在のウクライナの状況が嫌でも重なりひたすら重い気持ちに。短いながら読ませる解説にもあるように「民族融和」「和解」「共存」とは軽々しくは口にできない険しい空気を著者の綿密な取材から実感できる。最終章はハリルのことにも触れてあり、日本サッカー協会の非礼には本当に申し訳ない気持ち。そして日本と関わってくれたことに感謝。2022/09/07