新潮文庫<br> 文学の淵を渡る(新潮文庫)

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新潮文庫
文学の淵を渡る(新潮文庫)

  • ISBN:9784101126241

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内容説明

聖なるものと優れた小説がともにもつ、明快にして難解な言葉の有り様を語り、鴎外から中上健次まで百年間の名作小説を、実作者の眼で再検証する。また、外国詩を読み、翻訳する喜びを確認し合う傍らで、自らの表現を更新するたび「+(プラス)1」を切望する、創作時の想いを明かす。日本文学の最前線を半世紀を超えて走り続けた小説家が、それぞれの晩年性(レイトネス)から文学の過去と未来を遠望する対談集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

131
1933~2015で大江健三郎と古井由吉との対談六回。「特性のない男」を訳しきった吉井氏は、ご自分の小説は難解ではないと仰っるが読む方が難解と思えば難解であるのですよ。小説は説明文であっては文学でないのは確か。最後の漱石についての対談が一番頷いた。口に出して極めて軽快、リズムで入る。そう、名人の文は、読みやすいのだ。その中で難しいテーマを書いた小説が個人的には一番好きだ。お二人がいう漱石文学についての評、「真面目な人間が真面目に生きづらく、自殺してしまうようなところを書いている」なるほど、そうかもしれない2018/09/06

やいっち

90
[大江健三郎逝去。晩年の対談。遺言のような。(3・13追記)]仕事の合間の楽しみにと、車中に持ち込んだのだが、読み出して両巨頭の対談の高等ぶりに、これはとてもついていけないと後悔気味。  それでも「日本文学の最前線を半世紀にわたり走り続けてきた作家が語る、小説の過去・現在・未来」ということで、興味深く理解の及ばないながらも付いていった。2023/02/01

kaoru

76
1993年から2015年までの対談集。お二人の教養と文学への深い洞察に改めて感服。鴎外から中上健次までを語る『百年の短編小説を読む』では日本の近代文学を俯瞰し『詩を読む、時を眺める』はマラルメなどの詩や漢語までが幅広く語られる。2015年の『言葉の宙に迷い、カオスを渡る』は80代になんなんとするお二人が互いの作品を批評する。今の日本にヨーロッパ文学から古事記まで幅広く語れる作家がいほとんどいないことを痛感。『文学の伝承』『漱石100年後の小説家』でも大江さんが若い世代に語りかけていることの大切さを思い→2023/04/15

kaoru

74
『漱石100年後の小説家』を再読。大江氏は「虞美人草」「こころ」「明暗」を、古井氏は「こころ」「草枕」「道草」をそれぞれ漱石のベスト3に挙げている。古井氏は「こころ」の先生と「私」を例に挙げて「文学の根源は案外人が人を慕うことにあるのかもしれない。人が人を慕わなくなれば、続いて文学も衰えてくるんじゃないでしょうか」。大江氏は漱石の「真面目の力」を評価し「自殺してしまわざるを得ないところに追い込まれてゆく人間を深い共感を秘めながら追いかけていた代表的な小説家」と定義し近代化以後百年の日本人の問題が明瞭に→2023/09/24

佐島楓

56
いま、日本で日本語で小説を書くことの意味。深い思索を重ねれば重ねるほど、理解している(と私が思い込んでいる)範囲が狭まっていく。このお二人は、文学に命を、そして人生を賭していらっしゃる。その覚悟が、私にはあるだろうか。2018/01/25

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