内容説明
2016年5月に逝去した世界的演出家・蜷川幸雄。生前に彼が残した「身体」「物語」についての考察を書籍化。約60年の演劇人生のなかで、日本人の現代性を象徴する俳優たちの身体を見つめてきた。蜷川が俳優の身体を語ることは時代を語ることであり、人間存在の本質を考察することでもある。雑誌掲載されたものを再編集し、本書だけに語った語り下ろしインタビューを掲載した。構成・木俣冬による関係者らの証言を集めたレポートも併録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
arisaka
7
演劇が映像作品と決定的に違うことは、生身の人間の存在感であると思う。何一つ隠すもののない肉体を観客にさらす覚悟と、その役者の覚悟を受け止める観客。その日その劇場にしか存在しない物語を役者の肉体を通して受け取り、咀嚼し、自分の中での糧とする。肉体にこだわり続けた蜷川さんによる演劇論。ネクストシアターとゴールデンシアターは、やはり観ておけばよかったなと後悔しきり。不在から3年。不在の在が日毎に大きくなっていく。2019/10/31
nightowl
6
御本人が生きているときの舞台はテレビでジャン・アヌイの「ひばり」を見ただけで、「NINAGAWAマクベス」も「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」も亡くなってからの観劇。何故もっと演劇に早くはまらなかったのかと大後悔。これからの舞台論について突っ込んで聞きたいと思った所で終わってしまうのがとても残念で悔しい限り。バトンを託された俳優の方々の活躍を願ってやまない。2019/02/25
hiyu
6
物凄く読みやすい。冒頭から蜷川氏の偉大さが伝わってくるものであった。本書を読むにつれ、82年組をはじめとした本書に登場する俳優への愛情が強く感じられた。同時にこれからの日本人にも、日本という国への想いも。2018/11/06
Kentaro
4
ダイジェスト版からの要約 現代の30代の若者たちの姿形や皮膚感は皆、似ている。一様にヒョロッとやせていて、重心が高く、肌質がツルツルしていて表情が単調。それから声が小さい。コンピュータを中心にした生活が主流となり、ネットとケータイさえあればほぼ全てが済み、身体もコミュニケーションの形も大きく変わった。デジタルの進化自体はとてもいい事だし、そこから新しい身体表現が生まれる事を目撃できる世代がうらやましくすらある。ただ、デジタルの進化が世界全体の生活を画一化し、若者の顔を似せてしまうならばそれはもったいない。2018/07/26
mamaboo
3
怖いというイメージしかないが、演劇に対する思いが伝わってきます。2018/07/15